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スッパアアアン、グシャァッ!
たぶん擬音的にこんな感じだったと思うんだけど、これ聞くの何回目になるんだろうね、音の出処は襖なんですけれどもどうやったらそんな音が出るんだって聞きたいよね、うん私が聞きたい。
その襖昨日直したばっかりなんだけどな、このお城の使用人さんが泣きながら一生懸命直してたんだけどなあ。
元通りに直せ!さもなくば斬首だ!って壊した人が言うもんだから、それあなたが言える台詞ですかって突っ込みたかった、使用人さんが本当に可哀想だった。


「なまえッッッ!」


漫画みたいに襖を壊してくれる犯人は三成さんである、私の名前に「ッッッ」なんて小さい「ッ」をたくさん入れなきゃならないほど大きな声で呼ばなくても聞こえてます。ジョジョか。


「なまえ……ッまたそのようなはしたない格好をッ!どういうつもりだ!」
「え、いや、夏だし暑いですし」


何しにきたのか知らないけど三成さんは私の格好を見て、幽霊みたいに白過ぎる頬をぽっとピンクに染めた。小学生か、その恐ろしく目付きの悪い表情で恥じらわれると正直気持ち悪い。
現代っ子の私は夏に着物とか拷問もいいところ、この時代の女の人って肌をあんまり露出しないんだっけ、歴史の点数壊滅的だったからわかんないや。
郷に入っては郷に従……うのが普通かもしれないんだけど、ここの人達って常識からことごとく逸脱してるから私も別にいっかなーって。

だからTシャツにショートパンツのサロペット、裸足っていう格好でくつろいでたの。


「そんな淫らな!魅力的にもほどがある格好で!恥を知れ!」
「いやでも私のところではこういうの普通ですし、もっと際どい格好をする子なんで星の数ですし」
「も、もっと際どいだと!?」


ちょっと意味深な単語は全て無視、スルーだスルー。それと三成さんに水着の存在は黙っておこう、たぶん話がややこしくなるだろうから。


「今は私だけだから良いものの!女が胡座をかくな!誘っているのか!私を誘っているのか!?」
「胡座からどうしてそっちに話が流れるんですか」
「もっと際どい格好も私の前だけならば許可するッ!」
「私よりも三成さんが恥じらった方がいいと思います、発言的に」


ところで三成さんは何しに来たんだろう、用があるなら済ませてさっさと帰ってくれないかな、この人と一緒にいると身の危険をひっしひしと感じるんだよね。貞操的な意味も含めて。


「用などない」
「じゃあ何しに……」
「なまえに会いに来ただけだ!あわよくばという期待も込めてだ!」
「ちょっと仰ってる意味がわかんないんでお引き取りくださいねー」
「……詳しく言えと?」
「ああ、わかりたくないんで詳細情報は結構です、はいさよならー」
「わかった、なまえがそこまで言うのなら説明してやる」
「言ってない言ってない、私何も言ってない、三成さん会話してください会話」


ズンズン近付いてくる三成さんに、身の危険を極限に感じている、レッドアラートだ!メイデイメイデイ!誰かスクランブルで助けに来てください!
……助けはこない、わかっているけど虚しいよね!私も自分でなんとかできないこともないから別にいいんですけれども!
ずりずりと座ったまま後ろに下がって行き着く先は壁だ、迫り来る三成さんが、壁を背にした私の両側に手をついて逃げられなくするのも想定の範囲内。近付けられた顔がまず最初に首筋に向かい、舌が首筋を這って、べろりと舐め上げられるのも、まだ範疇内。


「なまえ……」


熱っぽい視線と甘ったるい声色で総攻撃をしかけてくる、とりあえず申し訳程度のお窺い。三成さんが顔を上げた今が反撃開始の合図である、三成さんの両頬を掴んで、首を引っこ抜く勢いで引き寄せた。
そのまま私から唇を押し付けましてのべろちゅう、押し倒そうとする彼を逆に押し倒す素振りを見せればあっさり倒れてくれるので、そのまま勢いよく向こうへ押しやる。
道は開けた!倒れた三成さんを跨いで飛び越えれば、自由である。襖の消滅したこの部屋からの脱出、唇は犠牲になったけれどもっと大事なものは守れたので良しとする。


「なまえーッ!」


三成さんのことが嫌いなわけじゃないんですけれども、今はまだこの距離感が丁度いいんです。

20140706
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