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待ち合わせの5分前、指定の場所に早歩きで向かっていればすでにそこには見知った人物が仁王立ちでそわそわ落ち着かない様子で立っていた。
言わずもがな私の彼氏様、石田三成くんである。きょろきょろ視線をあちこちに彷徨わせている姿が珍しく新鮮、ちょっぴり不審者っぽいなって思ったけどそれはそっと心の奥にしまっておいた。


「み、三成くん!ごめんね、待った?」
「いや、先ほど着いたばかりだ」
「先ほど?」


なんだろう、妙に引っかかる。聞き返すように同じ言葉を繰り返せば三成くんは「つい1時間ほど前だ」と、さも当然だと言いたげに言い放った。ちょっと待って1時間も前からここにいたの?それって先ほどって言わないよね!随分待ってたことになるよね!


「え、ほんとに!?ご、ごめんね1時間も前からいたなんて……!」
「ふん、この程度待っていたことになどならん」
「そ、そう?」


腑に落ちなかったけど三成くんがそう言うなら。怒っているわけでもないみたいだし。

テスト明けの最初の休日、なんとか無事にテストを終えることができた私たちは、テスト前に約束したいわゆるデートをしに外へ出た。三成くんの私服初めて見たなあ、スタイルがいいからなんだって似合う。すみれ色がよく似合う人だとぼーっと見つめていたらふと三成くんと視線がかち合って、珍しく困ったような表情が窺えた。


「制服ではない、な」
「え、うん、そうだ、ね」
「制服でなくとも、その、なんだ、悪く、ない」
「え、っと……よ、喜んでいいのか、な」
「……っ」


普段から顔色の悪い三成くん、ぽっと血色が良くなった頬を見たらこっちまで恥ずかしくなっちゃった。どうやら褒めてくれたらしい。薄い唇を引き結んでそっぽを向いてしまう三成くんがなんだか新鮮で、可愛いな、なんて。きっと口にしたら怒っちゃうだろうから言わないでおこうっと。

あ、そうそうそれから、行きたい場所を考えておけって言われたんだけど、やっぱり行くなら三成くんも一緒に楽しんでくれる場所がいい。そう思って人混みに飛び込まなければないらない場所はあらかじめ除外、ゆっくりのんびりしたいからあてもなくお散歩がいいなって。
近くに迷路みたいな大きい森林公園がある、そこの遊歩道を森林浴がてら、他愛もないおしゃべりをしつつ並んで歩きたい。


「そんなことでいいのか」
「うん、だめ、かな」
「だめなわけがない!なまえがそうしたいのならば構わん」


行くぞ、と三成くんは踵を返してずんずん突き進んでいく。


「あ、待っ、わぷっ」


慌てて追いかけ、追いついたのはいいけれど三成くんが急に立ち止まるものだから背中に突進してしまった。半歩下がったところで三成くんが振り返り、なんとも言えない表情をじっと見つめていたら右手をあっという間に攫われた。
無言のまま歩き出し、手を繋がれたことを認識するのに数秒、少し冷たい三成くんの手は私の手の温度を奪っていく。でもそれがひどく心地いい。


「……はぐれたら、面倒だ」


こんなところではぐれようと思ってもはぐれられないよ、当たり前は飲み込んで、頷きながら同意するように三成くんの手を握り返した。三成くんは変なところで大胆で、変なところでシャイらしい、今日はいろんな彼を発見できている。

気が付けばドキドキしっぱなしの自分がここにいた。


(風と時間が穏やかに流れていて、三成くんの穏やかな横顔に見惚れてた)

20150527
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