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貴重な安らぎの時、お昼休みを返上して私は空き教室に出向いた、んーん、出向いたというよりも連行されたと言った方がしっくりくる。
凶王三成くんによって。


「み、三成くん……」
「なんだ」
「えっと、その、ええと……」
「はっきり言え、もう一度問う、なんだ」


なんだも何も!
そんなに穴が空くほど凝視されたら誰だってそわそわしちゃうよ。こっち見ないでなんて言えっこないんだけど、私はママが作ってくれたお弁当を食べ、三成くんのお昼と言えば10秒メシというキャッチフレーズでお馴染みのウイダーのみ。
育ち盛りの男の子がそれだけっておかしい、私だったら死んじゃう、線の細過ぎる三成くんはもっと食べた方がいいよ、隣に並ばざるをえない私が惨めだよ。


「三成くん、お昼それだけ、なの?」
「ああ」
「お腹空かない?」
「特に」
「そ、そっか」


見るからに不健康ですと言っているようなその顔色、今まで三成くんが間食をしている場面に遭遇したことがない、お昼だっていつもあのゼリー状飲料ばっかりだし、極たまにカロリーメイトを持っている時があるだけだ。
そういえば大谷くんが言ってたっけ、三成の常はわれらの常識範疇外よ、って。睡眠時間も常人の半分以下なんだって。
それが常だから、三成くんの体もそれに慣れてるんだろう、痩せようとかそういうつもりではなくて、生まれつきの体質。ちょこっとの食事と申し訳程度の睡眠で日常生活が送れてる三成くん、ある意味すごい、燃費が良くて羨ましい。(私なんかちょっと食べ過ぎるとすぐにぽよんぽよんになっちゃうのに)
でもはたから見てるとやっぱり不健康、すでに自分の食事を終えた三成くんは相変わらず私を監視し続けている。まだまだ半分以上残っているお弁当を貪る私、うう、怖いし食べにくい。


「あ、あの三成くん」
「なんだ」
「す、好きな食べ物とか、ある?」
「特にない」
「そ、そうなんだ」


そして会話、全く続かない会話。ぶった切られるような回答からこれ以上どうやって盛り上げろというんですか、最初から難易度が高過ぎる。会話のキャッチボールがしたいのに、まるで投げたボールをはたき落とされた感が否めない。
依然としてこっちを睨むようにして監視を続ける三成くん、私は気まずさと緊張のあまり軽くパニックに陥っていたのかもしれない。
自分でもよくわからないけれど、食べていたお弁当の一品、つやつやのソースを纏ったミートボールをフォークに突き刺し、おずおずと三成くんの前に出した。


「なまえ?」
「え、っと、あの、よかったら……食べる?」
「……」


はい、あーんの状態である。
目を見開いて固まった三成くん、視線だけが忙しなくミートボールと私を行き来する。


「ご、ごめんね、やっぱやだよね、食べかけなんて……」
「いるッ!」
「ひゃっ!」


フォークを持った手を引っ込めようとすると、三成くんは慌てた様子でそれをさせまいと、私の手を掴んだ。あまりにもぐいぐい引っ張るものだから私の体は自ずと前のめりになる、しばらくミートボールに見入っていたかと思えば、一口でそれを食べた。
三成くんの口が咀嚼で動いているところをあまり見たことがなかったから、むぐむぐと動いている口元が新鮮だ。ちょっと可愛い、なんて思ったりして。
あ、三成くんミートボールのソースがついてる。依然フォークを持った手は掴まれたままなので、反対の手に持ったお弁当箱を置いてポケットティッシュを取り出す。きょとん顔の三成くん。


「ソース、ついてるよ」


恐る恐る口の端を撫でるようにティッシュで拭う、大丈夫、怒られるようなことはなさそうだ。


「……ッ!」


でもやっぱりいつも通りクワッ!と目を見開いて息を飲んでる三成くん、震えだした両肩に思わず身構えた。怒号が飛ぶかもしれない、余計なお世話だったかな、み、三成くんその顔怖いよ!


「れ……」
「え」
「礼を、言う……ッ!」
「え、え?あ、う、うんっ!」


お、怒られなかった!それはよしとしても未だに掴まれてる手が痛いよ、ミッシミシいってるから!三成くん掴む力が尋常じゃないよ!落ち着こ?一旦落ち着いて私の手、離そ?ね?
私涙目になってるから!察してください!

(手首折れちゃうよー!)
(こ、

20140630
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