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春は虫がうざいからきらい、夏は暑いからきらい、秋は一日が長いような気がするからきらい、冬は寒いからきらい。


「なまえちーん、ぎゅー」
「っと、させるかドチクショウ!」
「っとと、もーなんでなまえちん避けちゃうのー」
「なんで!?こっちが聞きたいわ、なんでむやみやたらに抱き付いてくるかなあ!」
「えーもう質問に質問で返すのやめてよー」


おれが好きなのはお菓子と寝ること、それからこのなまえちん。あとは大体どうでもいい、面倒だからきらいってくくりでいいや、興味ないし。
なまえちんとは昔から家が近所で親同士も付き合いがあって、いわゆる幼馴染ってやつかなあ、おれの方がいっこ下なんだけどねー。いつも一緒、これからもずっと一緒だと思ってる。


「なまえちんにぎゅーってしたいからぎゅーってすんだし、それ以外に理由いんのー?」
「……ああもう、全くもう」
「あ、」
「あ?」
「隙あり、うりゃーぎゅーっ」
「あ、あつ、ちょ!コラァアアア!」


おれ、なまえちんが好きだから。
だからぎゅってするんだし。そんでもって、きらいだった春もなまえちんと一緒にお花見団子食べられるから好き、夏もアイス半分こしたりたくさんできるから好き、秋は日が長いから長い時間一緒にいられるから好き、冬は寒いのが苦手ななまえちんが近くに寄ってきてくれるから超好きになった。


「なまえちん好きー、だいすきー」
「そういうのは彼女に言ってやりなさい」
「彼女ー?いねーし、おれなまえちんひと筋だし」
「はいはい」


好きすぎておかしくなっちゃいそうだっていうのに、なまえちんはおれのこと全然見てくんないの。今まで食べたお菓子の数よりもたくさん好きって言ったのに、たくさんぎゅってしにいってもだめ。なんで、どーして、こんなに大好きなのに。


「なまえちんひどいー」
「敦、もう次の授業始まるから早く教室戻りなよ」
「えーもうそんな時間ー?めんどくさーなまえちん一緒にさぼろー」
「ふざけんな私の皆勤記録潰す気?」
「むー」
「じゃあ放課後までちゃんとがんばれたら帰りにパフェ奢ってあげてもいいよ」
「アララ?急にやる気出てきたぞう、約束だかんね、破ったらひねり潰すかんね!」
「わかったわかった、ほら行った行った」
「ん」
「……なにそのタコ顔」
「いってらっしゃいのチューは?」
「……うん?いってらっしゃいの『中段蹴り』?」
「つれないけどそんななまえちんもすきー」


スゥウ、と構えのフォームを取ったなまえちん。おれはすぐにばいばーい、と手を振って教室に向かう、ほんとはやなんだけどねー。ちなみになまえちんの蹴り技は正確で怖いし超痛い。この時、そそくさと退散したせいでおれはの耳には全然届いていなかった。なまえちんが不意に呟いた言葉が。

『……ひどいのは、どっちだっつの』

20050609
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