WJ | ナノ

少しだけ、未来のお話をしましょうか。


「……ん……くん……真くん」
「ん、」
「あ、ちょっ、真くん起きてってば」
「……やー、らけえ」
「真くん寝ぼけてる?」


上から降ってくるなまえの声、それを頼りになまえがいるであろう場所に腕を伸ばせば簡単に捉えることができた。恐らく掴んだのは腕だ、力任せに引けばいともたやすく倒れ込んでくるからそのまま抱き込んで、ベッドの中へと引きずり込む。
抱き締めて顔を埋めた場所は胸、柔い膨らみがふたつ、暴れも振り払いもしないなまえは困ったような、仕方がないといったような雰囲気を滲ませながらも俺の頭を緩く撫でて髪を梳く。

心地よさからまたうとうとと睡魔が忍び寄ってくるが、それはさせまいとなまえがすかさず揺さぶって、起こしにかかってくる。もう少しだけと甘えてみたが、今日のなまえは強情だった。


「今日はだめだよ、ほら起きて起きて」
「……ねみい」
「ね?いい子だからこっち見て?」
「……?」
「真くん、今日お誕生日だよ、おめでとう!」
「……は?」


のろのろ起き上がり、なまえを腕に閉じ込めたまま向かい合う。寝癖が付いているのか、同じ場所を何度も撫でながらなまえが微笑みながら言い放った。一瞬何を言われているのか理解できずに固まると、噛んで含めるようにゆっくり「おたんじょうび」反芻された。

今日は……そうか、俺の、誕生日。

胸の内側がむず痒い、奥深くから込み上げてくるものは幸福感だ。陳腐で何のヒネリもない感想だが言い回しなんてものは今はどうだっていい。


「真くんのわがまま、何でも言っていいからね、あっ、でも二度寝はだめだよ?」
「何でもって言ったくせに」
「寝正月ならぬ寝誕生日なんてもったいないでしょ?」
「別に、なまえがそばにいれば俺は……あ」


そうだひとつ思い付いた、せっかくだから早速なまえにワガママ、言ってみるか。


「ん?なあに?」
「30センチ以上離れない、むしろ離さない」
「さ、30!真くん30センチってこんなもんだけど……」
「いいだろ、決まり」


仕方ないなあ。ふくふく笑うなまえさえそばにいれば、それだけで十分だ。あとはいらねえ。

少しだけ先のお話、行く末はまぶしいくらいに輝いている。

20160112
花宮お誕生日おめでとう記念連載番外編
 / →

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -