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高校の部活までだった、その辺のクラブチームやストリートの数合わせで時々呼ばれることはあるが、昔ほど頻繁にはやっていない。ああ、バスケの話。


「花宮!花宮はーなーみーやぁ」
「うるせえな、なんだ」
「今日の」
「パス、古橋にでも頼んどけ」
「ちょ、最後まで言わせてって」
「どうせ人数合わせのストリートだろ」
「ううわ、ご名答ーなんでわかんの?エスパー?」


鬱陶しい前髪を揺らつかせながら原一哉が俺の行き先を塞ぐ、邪魔だどけ。大体エスパーもくそもあるか、お前が俺のところにくるのは大抵サボった講義の内容を聞きに来るか、バスケ絡み、時々メシの誘いくらいだろうが。消去法って言葉知ってるか?つい先日講義の内容を聞かれたばかり、昼飯の時間はとっくに過ぎている、となれば残ったのはバスケ絡み。

だが残念だったな。


「俺は用がある」
「お?もしかしてもしかして?例の幼馴染みのオネエサマ?で、どうよ味見した?もうがっついちゃった?」
「黙れよババロア脳、お前には関係ねえだろ」


相変わらずの減らず口は、ガムを噛みながら余計な詮索をしては苛立つ場所を突いてくる。霧崎にいた頃つるんでいた奴らがほとんど同じ大学に進んで、面倒だと思った部分もあるが、俺の本質を知っている奴がいると楽な部分もそれなりにあった。不本意ではあるが、な。

それより、このババロア脳……原はよく大学に進めたな。優等生で通してた俺と違ってお前の生活態度は最悪だっただろうが。こんなババロアガム野郎が専攻は違えど俺と同じ大学だと?ふはっ、ほんと世の中腐ってんな。


「そんなこと言うなよ、ちっとくらい教えてくれたっていいだろー?」
「っせえな」
「なあなあ原くんにおせーて、花宮くんの恋バナちょー聞きたぁい!」
「寄るな気持ち悪ィ!その辺にいるちんちくりんのブス共なんか目じゃねえくらい素敵な人だバァカ」
「ブフッ!花宮が素敵とか言ってる!レア、ちょーレアじゃね?お前素敵って単語似合わねー!もっかい言って?」
「……張っ倒すぞ」
「あーうそうそメンゴ!冗談ぴっぴー!」
「……ぶっ殺す」
「きゃー花宮きゅんこーわーいー!」


くねくね気持ち悪い動きで走り去っていく原に舌打ち、あいついつかなぶり殺す。俺にフラれ恐らく古橋の元へ向かったんだろうと予測できたついでに、ポケットから素早くスマフォを取り出し、メール画面を起動させると手早く古橋に短い文を送った。

【できる限りもったいぶってやれ】

ヤツならきっと察するはずだ、原の頼みに対してのことだと。願わくば原が本気で泣きつくほどにもったいぶるといいんだが、それは古橋の気分次第だ。以前宅飲みを強要された挙句、聞きたくもない失恋話を延々とループされて心底うんざりしたと零していたから恐らく結果は面白いことになるだろう。
まったくあの野郎のせいで余計な時間を食った、せっかく今日は講義が一コマ休講だったっつーのに、時間が惜しい。急ぎ足で帰るべきマンションへと向かう、あの人と俺の居場所へ。

20150609
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