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っせえな、黙ってろよクソが。イイ子ちゃんでいるのも楽じゃねえ。大体あいつらは俺に何を求めているんだ、期待するだけムダだっつうの。勉強ができてなんだ、将来使うかよこんなもん、何の役にも立ちやしねえ、学者になるんじゃあるまいし。疲れてんだよ俺にかまうな寄ってくんな、好きにさせろよ忌々しい。

先週は何かと忙しかった、表面上は優等生を取り繕う俺に面倒なことばかり押し付けてきやがるクズにいい加減にしろと叫んでしまいそうで、抑え込んだ感情をなまえに吐露することで発散させた。


「どうしたの、そんなにイライラしちゃって」
「どいつもこいつもウゼエ、その一言に尽きる、揃いも揃って頭の弱いクズばっか」
「そのクズの中に私も含まれてたり、する?」
「はぁ?バァカ、含めてたらお前はここにいない、そのくらい察せ」
「えへへ、ありがと」


なまえの膝に頭を乗せ、体の力を抜いた。そろそろとなまえの手が頭に乗せられ緩く撫でられる。上を向けばきょとんとしたなまえと視線が絡み、すぐに嬉しそうにふやけた笑顔を見せられた。このアホ面に惚れたなんて言ったらこいつはなんて返すんだろうな、お前の顔を見てると安心する……なんて、らしくねえ。


「おい」
「な……」


に?を言わせる間も与えてやんねえ。腕を伸ばして襟元を勢いよく引き寄せればなまえは前のめりに倒れこむ。お互い逆さまの風景を横目に唇を触れ合わせてゆっくりと、離れた。真っ赤にした顔を俯かせても俺は下からなまえの顔を覗き込むようにしているから全然隠せていない。照れて焦る顔が支配欲と征服欲をさらに増幅させる。


「真くんはずるい……」
「何がだよ」
「何してもかっこよくて許されちゃうから」
「はあ?勝手に許してんのはお前だろうが」
「そ、そうだけど……」


惚れた弱みというか、好きすぎてどうの、ぶつぶつとむしろそれの方が照れるだろという言葉を紡いでくるなまえの方がよっぽど可愛いだろ、バァカ。ひとつため息を零したなまえはそれからね、とわずかに体勢を捩じると俺の眼前に何やら突き出してきた。

なんだと聞くまでもなくラッピングされているそれに今日の日付を思い出して手に取った、ヴァレンタインなんてくっだらねえなとは思うがなまえからもらえるんだったら受けとらないわけにはいかない。まさかとは思うが俺以外のやつにやったりしてないだろうな?


「真くん今日は日曜日だよ、会うのは真くんだけだから」
「……ご苦労なことだな」
「甘すぎないようにはしたけど、口に合わなかったらごめんね」


俺だけ、その言葉に自然と口角が上がるのを感じる。おもむろに綺麗なラッピングをほどいて中身を取り出せば透明なカップに入れられたトリュフが現れた。丸いそれを一粒つまむとココアパウダーが指先を色付ける。しばらく眺めて口に放り込めば、全く甘くないココアパウダーのあとにチョコレート特有の甘ったるさが広がった。「……あっま」口をついて出た一言になまえが困ったような表情を作る。弁明のつもりなんてさらさらないが、俺は続けて口を開いた。


「まずいなんて言ってねえよ」
「え、えっ、わっ、んん!?」
「これで、ちょうどいい」


手を伸ばしてなまえの後頭部を押さえつけ、引き寄せる。なまえの腿を枕にしている俺と前屈みに引き寄せられるなまえの格好の不自然さといったら。別に誰が見ているわけでもない、甘ったるさの残る唇を押し付けわざとらしく音を立てて離せばおもしろいくらいに動揺している。「あ、甘い、です……」ふはっ、誰も聞いてねえよそんなこと。


トリュフにくちづけ

20160214 おひさしぶりにイベントものを。
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