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ほら、月曜日って聞くだけでいやな気持ちになるじゃない?ブルーマンデー症候群とかサザエさん症候群とか、どこかの精神科の先生が統計を取ってそんな名称をつけた。週明けに調子が悪くなったりする人が比較的に多いみたいだから。

でもそれってこんなストレス社会になっちゃったせいでこうなったんだから、日本はもっと労働時間を減らして残業もなくして自分のための有意義な時間を作るべきだと思うんだ。

就職率が宝くじの当選確率のように低い不景気な世の中……宝くじはちょっと言い過ぎた。とにかく就職難で就職倍率は年々厳しさを増していく近年。
高卒で働く気になどなれず、友人たちの就職合戦を遠巻きに眺めながら私は可もなく不可もないごく普通の大学へ進学した。夢も希望も最初からどこにも見当たらなくて、やりたいことも見つけられないまま大学生活は三年目を半分ほど終えてしまっている。

迫り来るいつの日かの悪夢、最後の就職合戦である。ここで躓いたら後がないような気持ちにさせるのが大学マジックだ。高校の時よりも狭き門となってしまったような気がしてならない、いっそ消えてなくなりたい。こう、フッと。蝋燭の火を消す感じのノリでフッと。
本当に心からずっと学生でいたいと思う、与えられた課題を黙々とこなして先生たちに愛想を振りまいていれば成績表は判定がキラキラ輝いて紙面に踊る。
働きたくない、世間から押し付けられる責任の重圧に絶対負ける。ああいやだいやだ。就職のガイダンスの日程が貼り出された掲示板を横目に見ながら、次の授業がある講義室へ足を向ける。

ああやだやだ見てないなんにも、私はガイダンスの日程なんか全然知らない。無意識のうちに頭にインプットされた日付けを振り払うように首を緩く振って、のろのろ歩く。

ああもう、ほんとやだな。元々憂鬱気味だった気分が余計に沈む、講義に行くのも乗り気ではな区なった、いやね、元から乗り気じゃなかったんだけど。今日は全部ばっくれちゃおうか、私の中で悪魔がうっそりと囁いている。


「なまえ、今から一緒にどこか行かないかい?」


赤い髪の、左右非対称の瞳の悪魔が爽やかさと何やら含んだ笑みを携えて、悪魔が……いや大魔王様が目の前で囁いた。どこから湧いた。


「やだな、ずっと一緒にいたじゃないか」
「何それこわい」


物理的にきっちり3歩引いた、爽やかさと一切の拒否と否定を赦さない微笑みを携えて突然湧いて出た赤司征十郎。歩く厨二病、私の嫌な顔に対して彼は一層笑みを深くして、せっかく離れた距離をたったの一歩でなかったことにしやがった。身長はどんぐりの背比べ、厳密に言えば私の方が2センチ高いというのに。

足か?足の長さとでもいうのだろうか、なんたる嫌味、腹立つ。


「新しくできたカフェテリアに行きたいと言っていたね、そこにしようか」
「なんで私が行く前提でしゃべってんの?行かないからね?」
「どうやらピタサンドが美味しいとか、中の具の種類も豊富だそうだ」
「……」


くそ、思わず決心が揺らいだ。ピタサンドといえば私の好物、ピタという中近東でよく食べられている中空のパンの間にいろんな具を挟んで食べるのだが、その中でも甘辛ソースを絡めて照り焼きにした鶏肉とサニーレタスを挟んだやつが私のお気に入り。
それを知ってか知らずか……いや、絶対わかって言ってると思う。この目の前の悪魔は私のお気に入りのピタサンドが載っている広告の記事をこれ見よがしにチラつかせながら微笑んでいる。

君はこれが食べたいはずだ、ああ間違いなく食べたいね、さあ僕と一緒に行こうか、行かないはずがない、いや行くべきなんだ。

最終的に有無を言わせない雰囲気、とんでもないやつに目を付けられてしまった私を誰か助けてください。

20151004
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