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ぎちぎちと押さえつけられている手首が痛い、下手したら折れる……いや、折られる。


「い、痛い、痛いよ敦」
「……」
「ねえどうしたの、なんで……」
「……」
「なんで、泣きそうなの」
「……だ、」
「え?」
「やだ、やだやだやだやだ!いやだ!」


ぼろりと大きな雫が目の前にいる敦の目からこぼれ落ちた、大きな子どものようだ。普段から子どもっぽい彼だがふたりきりになると言動はさらに子どもっぽくなる傾向にある。
単なるわがままなのだが度がすぎる、今だってそうだ、嫉妬からくる機嫌の悪さはお墨付き。

この間はノートをクラスメイトの男子に貸しただけでギャン泣き。(正直引いた)昨夜見たバラエティ番組の話で盛り上がったら仲間外れにされたとギャン泣き。(またか)果ては異性と朝すれ違いざまに挨拶を交わしたらギャン泣き。(いい加減にしろ)

どうしろっていうの。いちいち敦の嫉妬に構っていたら日常生活がままならなくなる、いっそ監禁したいとほのめかしているので少しきつくお灸を据えたらこうなった。手首折られる5秒前。


「なまえちんはおれのでしょ?おれだけを見ててよ、おれしか見えないよね、ねえこっち見てよ見てったらねえ、ねえ、ねえ、なまえちんはどこ見てんのおれのこときらい?すきだよね、そうでしょ、ねえ、ねえ!」


狂気の沙汰か。


「落ち着いて、少し冷静になってごらんよ、私が一度でも敦のこと嫌いって言った?」
「……ない、言ったこと、ない」
「出来る限り敦優先のつもりなんだけどなあ」
「だって、こわい、んだ、もん……」


何が怖いのかさっぱりである。


「全く、大丈夫だからいつもみたいにのんびりお菓子食べてればいいの、私の一番は敦、おっけー?」
「……うん」


腑に落ちてなさそうだけれど一応返事は聞いた、ある意味癇癪持ちというか病んでるっていうか。うっかり殺されなきゃいいけど、愛ゆえに。

掴まえられてる腕や何やら愛が痛い、ああ、うん笑えない。

20150510
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