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押し付けられた唇からいやっていうほど紡がれたのは、言葉ではなくて熱すぎる吐息。大きな手のひらが頬をすっぽり包んで、何度も何度も角度を変えながら唇を押し付けてくる。唇が触れ合うのと同じようにお互いの前髪すらも睦まじげに触れては離れを繰り返す。

私の息が上がっても彼、水戸部凛之助は何一つとして乱れていない。一心不乱、唇を押し付けることに夢中のようだ。 そろそろ解放してほしい、息が苦しくて涙目になってくる。

きゅ、と彼の逞しい胸板を隠しているシャツを掴んで押し返そうと軽く押しかけたら、何を勘違いしたのだろう。目元を緩めて嬉しそうに微笑みかけてくる。
思わず見惚れて一瞬苦しさをも忘れていたら、惚けて緩んだ唇の隙間にねじ込まれた生温かいもの。舌だ。本格的に息がしにくくなってきて水戸部くんに訴えかけても反応は薄い。


「みと、み、っ!」


僅かに唇が離れた瞬間を狙って声を掛けようと名前を言いかけたところで今度は手のひらが口を覆って塞いでしまった。苦しいよ!水戸部くん!ともぐもぐ口だけは動いたものの、声は届かない。
水戸部くんはその様子を見てふるふると首を振っている、なに?だめ?違う?違うって何が?もう一度言ってって?


「みと、むぐ!」
「……」


名前を言いかけてまた塞がれる、何が気に入らないのか水戸部くんは眉をひそめて首を振った。違う違うって、もしかして。


「り、凛之助くん……?」


ぱっと表情を綻ばせた水戸……じゃなくて凛之助くん、苗字じゃなくて名前で呼んでほしかったってことだったんだ。よくできました、そんなふうに頭を撫でられて、再びキスの嵐に襲われチアノーゼになっちゃうんじゃないかと心配になりました。

20140513
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