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大学生になっても彼は相変わらず生徒会の活動に勤しんだ、勉強も忙しいというのに、高校生の癖がどうにも抜けないらしく、相変わらず正義感の強過ぎる正義漢だ。

医科大学に進んだ私達はお互いの専攻科の履修科目や実習が多くて、二人でゆっくり、なんて時間は高校生の頃に比べると格段に減った。

佐介は内科医、私は看護師。

椿医院の息子だから佐介が病院を継ぐのは自然なこと、私は看護師になるつもりなんてなかったのに成り行きでここまで来てしまったのである。

ボクは絶対に医者になる、なまえにはずっと一緒にいて欲しい、だから君はボクのそばで働いてくれると嬉しい、そうだ看護師がいい、ずっとずっと一緒に居られるんだ。結婚して産休も復帰も心配要らないじゃないか、なまえとボクの子は、ボクが取り上げればいいし、ああ、そのためには産婦人科の研修も必要だな。

佐介の中で既に人生設計は出来上がっている、私との未来、もしかしたら私と別れるかもしれない、私じゃない人と結婚するかもしれない、そんな別ルートは存在していないらしい。高校生の頃から全然変わってない、お互いの時間が減れば減るほど佐介は私を束縛し続けた。課題も何もないたまの休日に、ベッドから一歩も出ず、私を抱き枕のようにしていたこともあった。

元々誰かに依存するようなタイプではないけれど、高校生にして初恋、私が初めての彼女だったのが原因だと思われる。息苦しいとは思っている、でもまだ「佐介が好き」という気持ちの方が上回っている分、仕方ないで済ませられる。


「佐介」
「う……ん?」


週末は佐介のマンションで過ごすのが常、そう取り決めれば自然と一緒の時間が増やせるという佐介の発案だ。

一緒に潜り込んだベッドは二人分の体温で十分過ぎるほど暖かい、まだ暗い室内は目覚ましも鳴っていない、目が覚めてしばらくぼんやりしていると、佐介がもそりと動いた。


「まだ、暗い……ど、した」
「大したことじゃないから適当に聞き流してくれていいよ、でも聞いて」
「……ん」


丁度いい位置を探りつつ擦り寄ってくる佐介を適当に撫でて、おもむろに口を開く。


「佐介さ、もし私が居なくなったらどうするの」


別れるつもりは毛頭ない、でももしものためのルートを考えておかないと、後が辛いし立ち直れなくなると思う、私はいいけれど、佐介はこの状態のままならもしもの場合、絶対に発狂する。

一途で不器用だから発想の転換も下手、今だってたった一言、仮定したことを言っただけで鬼のような形相で私を組み敷いている、さっきまで半覚醒だったのが嘘のよう。


「佐介、痛い」
「なまえ、今のはどういう意味だ、説明してくれ」
「説明も何も、もしものこと」
「ボクを捨てるのか」
「違うってば、事故とかで私が死ぬ可能性も無きにしも非ずでしょ、別れ話じゃないんだから、適当に聞き流していいよって最初に言ったよね。


出た、被害誇大妄想。

両手をきつくベッドに縫い付けられ見下ろされる、逃してなるものかと必死になる獣のような目、逃したら死ぬ、そんな勢いだ、怯えも孕んでいることは声の震えで気がついた。


「何故いきなりそんなことを言うんだ、なまえはボクが嫌いになったのか?」
「そうじゃなくて……」
「昨日の晩もボクを拒んだ!久しぶりにゆっくり出来る週末だから……だから!してくれると思った!」
「拒んだなんて大袈裟な」
「大袈裟なもんか!」


どうしようめんどくさいことになってきちゃった、佐介は口でセックスがしたいとは言えないみたいで、欲求不満です!セックスがしたいです!という時には異常なまでに身体をすり寄せてアピールしてくる。昨晩もベッドに入ってからしきりにくっ付いてきていたが、私は山のようなレポートをやっと終わらせてひどく疲れていた、だから今日は勘弁して欲しいと早々に寝入ったのだ。

そう言えば生殺しだとかなんとか呟いてた気がする。


「ボクがどれだけ我慢したと思ってるんだ!」
「本当に疲れて眠かったんだもん、寝落ちするよりマシでしょ」
「……わかった」


ふ、とため息をつかれ、掴まれていた手の力が僅かに緩む。


「ゆっくり寝たんだ、今ならいいだろう」
「はあ?」
「ボクは十分我慢した」
「ちょ、さす、んんっ」


発想の転換どころがおかしい、問答無用で唇を塞がれた。

付き合いたての頃は触れるだけのキスをするだけで卒倒してたくせに、今は舌までねじ込んで好き勝手、一丁前に早くもそそり立つ自分のモノを私の太腿に押し付けてくる始末。


「……っふ、張り切り、過ぎ」
「もう待てない」
「も、自分で、処理すれば、んっ、よかったのにひゃあ!」


抗議をしてももはや行為に夢中の佐介には届いていない、好き勝手に身体中を弄る、いそいそとパジャマを脱いで私のパジャマも脱がしに掛かる、ボタンがユルユルになるからあんまり引っ張らないでっていつも言ってるのに。

着ていたものを全て剥ぎ取られ、佐介の指が腰のラインをなぞって下へ下へと下りる、お互いに相手のことは全て把握しているから、僅かな反応でどこをどうすればいいのか聞かなくてもわかる、上気した頬を寄せ合って、私が十分に濡れたことを確認すると、佐介はそそくさと避妊の用意を始めた。

昔の佐介はそりゃあ可愛くて、うまく着けられなくて半泣きになりながら一緒に着けてあげたっけ、今じゃもう手慣れたもの。しかし今、私はそれを阻止、半分付けかけたものを引っ張って投げ捨てる、もちろん佐介は怒りだす。


「なにするんだ!」
「うん」
「もう待てないと言ったじゃないか!」
「待てなんて言ってない」


上半身を起こして佐介の肩を押しやる、逆に押し倒すそぶりをすれば意外にもすんなり倒れてくれた、引き締まった身体のラインをなぞって下半身に指先を滑らせる。いきり立つソレに緩く触れると、佐介は察したように歓喜で表情を輝かせた。わかりやすいところは変わらない。

顎が疲れるからあんまりしたくないんだけど、これが興奮し過ぎた佐介を落ち着かせるのに一番いいのは実証済み、期待を込めた視線を向けられたらもう後には引けない。ゆっくり近付いて少しずつソレを口に含む、独特の香りが鼻を突く、舌で撫でてやるとまた少し大きく膨らんだ。


「っく、なまえ……っ」


根元まで含んでえずきそうになりながらも、奥歯でやわやわと噛んでやれば佐介は腰を震わせて深く息を吐く、舌を動かすたびに震えて呻き、もっともっととねだるように頭を引き寄せられる。

全部出させれば満足するだろうと思って強く吸い付けば、佐介は案の定達したようでビクビクと痙攣しながら欲を全て吐き出した、ベッドを汚すのは嫌だったから、仕方なく白濁したそれを飲み込む。

気が済んだかな、と起き上がって様子を見れば満足げな佐介がいたのだが、腕を引かれたかと思ったらそのまま組み敷かれた、やばい。


「さす……」
「好きなんだ、なまえ」


さっき出したばっかりなのに、もう復活していやがる、新しく準備しておいたらしい避妊具を手早く着けると、佐介は組み敷いた私に自分のものを当てがった。

たった一晩お預けしただけでこんなになっちゃうの?佐介が私の中にぐいぐいと押し込んでくる、最初から激しく揺さぶられても十分に潤っていたおかげで難なく奥まで入ってきた。肌のぶつかる音と卑猥な水音、お互いの荒い息遣いがでたらめに不規則なリズムで部屋を満たす。

全然乗り気じゃなかったのに、いつの間にか佐介しか見えてなくて、首に腕を絡めて引き寄せた、気持ち良さそうに恍惚とした表情を浮かべる佐介を見ていたら、自分に与えられる快感と相まってもう全部どうでもよくなってくる。

ぐち、と奥まで押し付けられ次第に速くなる律動、余裕なんてとっくになくなってる、お互いに同じタイミングでびくびくと身体を震わせて、達した。荒くなった呼吸を整えながら、身を寄せ合い触れるだけのキスをする。

あらゆる幸せを詰め込んだ甘さを感じて、無性に嬉し泣きをしたくなった。

すっかり上機嫌になった佐介がその後甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのは、また別の話。

20131002
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