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週末は年下の彼である敦が私のマンションに転がり込んで、週明けまで一緒に過ごすのが常となっている。もうすぐ就職だというのにいつまでもゆるゆる余裕そうな姿に、社会人である私の方がひやひやする今日この頃。本人いわく、内定も決まっている上に実際問題余裕だから、とのこと。

私が就職の時はまるで戦、就職戦国時代とまで言われていたくらいだから羨ましいというかなんというか。

それはさておき、敦には自分のマンションの合鍵を渡してあるので、仕事から帰って室内から「おかえり〜」なんて聞こえてくることも珍しくはない。就活が終わったこの時期は暇だのなんだのとうるさくてかなわなかったけれど、内心満更でもない自分がいて最終的にはいつも甘やかしてしまうのである。

今週もいつものように来ているんだろうな、と思っていると仕事中にラインの通知が一件。アプリを起動してみれば、敦とのトーク画面にメッセージが入っている。

『なまえちんのへやにいんだけど今日は何時に帰ってくんの?夕飯なにー?』

もういるの?まだお昼なんですが。よほど暇を持て余しているらしい大学生の羨ましさといったら。ラインにはいつも通り定時に帰ると打てば、すぐにブーイングを示唆するようなスタンプが送り返されて思わず苦笑い。返事はどうしようかと迷っていると、ぽん、と通知音。

『待ってる』

たった一言だけどこの中には多分こういう意味が込められているんだと思う。

『いい子で待ってるから早く帰ってきて』

多分だけどね、甘いものでも買って帰ろう。彼の喜ぶ顔が無性に恋しくなって、ソファでごろごろぶつくさ文句を言いつつもおとなしく待っているであろう敦を思い浮かべながら目の前の仕事と向き合った。



「なまえちんおかえり」
「ただい」
「えっちしたい」

今日はよくがんばった、定時ぴったりに会社を飛び出し敦にすぐ帰るって連絡も入れた。帰宅途中に美味しいことで有名なスイーツのお店でクリームたっぷりのケーキを二種類購入し、意気揚々と自宅マンションの扉を開けた。

そしたらこれだ、ただいまも最後まで言わせてくれないうちに玄関で待機していた敦が私と荷物を丸ごと持ち上げて部屋へと闊歩。

「……え」
「え、じゃないえっちしたい、しよ?ってかするー」
「唐突すぎじゃない?待ってするならベッドに」
「いい、やだここでする」
「や、でもソファ狭いし」
「べつにーいいじゃん、俺今すっごいなまえちん泣かしたいんだよねー嫌がるなまえちん蹂躙してさあ、くたーってなったなまえちんによしよしってしたい」
「う、うわあ……」

どうしてこうなった。抱かれたまま敦もソファに倒れこんでくる、理由は聞かない方が身のためかもしれない。お風呂だってまだなんだから何としてでも阻止しなければ。

「俺イイコで待ってたんだからそれくらいは」
「ダメダメ、イイコで待ってたご褒美はこっち!美味しいケーキなんだから!」
「じゃあ両方」
「ダメでーす、ご褒美の相場はケーキと決まってるんですー」
「はあ?」

むくれる敦を押しのけてソファから抜け出す。夕飯の支度だってしなくちゃいけないんだからね、マジバでいいじゃんとは言わせません。ムダ遣いはいやだからね。

「なんだよ、いつだったらいいの」
「え」
「今がダメならいつ」
「え、えっと、寝る時……とか」

平然と時間指定ですか、曖昧に濁しながら言えば敦は若干の不満を滲ませながら見つめてくる。私が立てなくなってしまえば夕飯が食べられなくなると気付いたんだろう、小さくため息を零してソファにごろりとのびる。

「わかった、いーよ」

不敵な笑み、なんだろうすっごく嫌な予感。

「寝る時、楽しみにしといてよね」
「あ、敦?」
「俺、手加減できないかもー」

言葉にできない。寝る時間が不安過ぎる。

20180217
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