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練習もミーティングも終えて、ほんの少し疲れた顔をした赤司が音もなく背後に佇んでいて心底びっくりした。


「っ、赤司……来たなら来たで声くらい掛けてよびっくりしたなあ、もう」
「すまない」
「どしたの、元気なさそうだけど」
「いや、疲れてるだけさ」


むりやり作ったようなぎこちない笑顔を貼り付けた赤司は「さ、帰ろう」と呟いて先を歩く。何をやせ我慢しているのかは知らないけれど、疲れてるだけだなんてバレバレの嘘はやめて欲しい。
余計心配になっちゃうから。


「赤司」


いつもの強くて頼れる赤司が今は何かに怯え、まるで沼の底に突き落とされて這い上がろうと必死にもがいてるように見えた。懸命にひた隠して、押し殺してる。


「赤司」
「……なまえ」


先を歩いていた赤司が足を止めて振り向いた、ぎこちない苦笑いがわざとらしい。私だけでは役不足かもしれない、赤司を支えるのには、きっと。それでも私が赤司のそばにいたかった、危なげな彼を放っておけなかった。


「なまえは、ずっとそばにいてくれる、そうだね?」
「赤司が……そう願うなら」
「その言葉、信じているよ」


ひどく安堵したように息をついて赤司が隣に並ぶ、私よりも少しだけ小さい彼の頭を控えめに撫でたら、僅かに困惑の色を窺わせて、いつまでも子どものように扱われるのは頂けないな、と不満を口にする。(それでも満更でもないようだった)

今はどっちの赤司かと聞こうとして、口を噤む。野暮なことは聞かない、答えはわかりきっている。どちらであってもきっと同じことを言う、きっと。


20150627
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