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えーっと、今日のメニューは……っと。
紙の束をぺらぺらめくって確認作業、マネージャーといえば、選手の部員にとって練習しやすい環境を作り、あらゆる面での補助をすることだと認識している。どんなスポーツでもそうだと思うのだけれど、強豪になればなるほどマネージャーの仕事というのは大変なのだ。帝光中のバスケ部も例外ではない、部員数も半端なく多い上に練習がきつい分、部員たちには細やかな気配りが必要になる。

1から3までの軍があり、それぞれに専属のマネージャーがいるわけなのだけれど、マネージャーももちろん生徒なわけで、どうしても部活に来れない日が出てきてしまうこともある。そのために私がいる、決まった軍につかず、フリーとしてのマネージャー。

どこかの軍で穴が開いてしまったらそこに行き、人手が足りないなどの埋め合わせ。あっちこっちに行ったり来たり、なかなか大変なんだけどやり甲斐はある。やり甲斐以外は……うん、まあ、それはそれで置いておくとして。


「あれーなまえちん今日1軍ー?」
「うん、桃が少し遅れるっていうから序盤だけこっち」
「やったあ、じゃあさー先にドリンクだけ
作っといてよーはやくはやくー」
「え、今日1軍なまえっちッスか!?」
「マジかよなまえ!さつきが来る前にドリンク!ドリンクだけ早くしろ!」
「頼むのだよ!早く!」
「なまえさん後生です……!」
「え、ちょ、近っ!わかった、わかったからそんな血走った目で見ないで怖い!」


生きるか死ぬか、水分補給のドリンクは部員にとって死活問題にまで発展する。熱中症も脱水症状も侮ってはいけない、最悪の場合死に至るんだから。
っていうかみんなそんなに喉渇いてるの?桃もあと少しで戻ってくるし、あとちょっと待てばいいじゃないの。桃の作るドリンク、普通に美味しいでしょ?


「なまえちんはさー一回病院行った方がいいんじゃないのー?」
「病院?私どこも具合悪くないけど」


失礼な!私のどこがおかしいって言うの。そんなこと言ってるとドリンク作ってあげないからね。


「皆、それくらいにした方がいい、折角なまえがいるんだ、あまりわがままを言って困らせるのはよくない」
「あ、お疲れ赤司」
「ああ、ここは俺に免じて」
「わかったわかった、作らないなんて冗談だよ、ちょっと悪ノリしただけ」


ドリンク!ドリンク!と囃し立てるカラフルな奴らに悪ノリして反発したところで赤司が参戦、いや、むしろ中立の立場で仲裁にきたみたい。困ったような表情でこられるとすっかり毒気を抜かれちゃって、降参、白旗。
自分でも自覚はある、小学校からの付き合いである赤司にはどうしても甘くなるのだ。頼まれごとは二つ返事で了承しちゃうし、いつでもどこでも赤司を優先してしまう。


「頼んだよ、なまえ」
「はーい」


綺麗に微笑んだ赤司が私を見上げる。多分身長のせいかもしれない。年を重ねていけば追い越されるかもしれないが、今は私の方が背が高い。庇護欲を無意識のうちに掻き立てられているのかも、実際のところ赤司に頼られるといつもに増して張り切っちゃうから。
私はすぐにクーラーボックスに人数分のドリンクボトルと、スポーツドリンクの粉末を持って水道へ向かった。



「いやあ助かったッスよ赤司っち!」
「気にするな、俺もまだ死にたくはない」
「地獄を体験せずに済んでよかったのだよ」
「早くなまえちん戻ってこないかなー」
「お?さつきがクーラーボックス持ってきてんぞ」
「なまえさんと入れ替わりだったんでしょうか」
「みんなー!なまえからドリンク預かってきたよー!」


……数分後。


「な、何が、起きたのだ、よ……」
「ちょ、待っ、まさかの展開ッス……」
「あ、青峰くん、紫原く……大丈夫で、うぷ……」
「……桃井」
「なに?赤司くん」
「ドリンクは……誰が作ったんだ」
「え?んーと丁度なまえが赤司くんの分だけ作ったところで私が交代したよ?」
「……」


この後ドリンクだけは部員全員分なまえ担当にしてもらいたいと全員満場一致で切に願ったとかそうでないとか。

20150627
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