short | ナノ
世の中汚らわしく卑しいやつばかりが蔓延って、我が物顔で跋扈する。分子、ナノレヴェルでばらっばらになって人間と呼べないものになってしまえばいいのに、むしろ跡形もなく消滅しろ。馬鹿だの阿呆だの幼稚な罵りも全て全部一息で吐き出した。

「関興くんが電車で痴漢の被害に遭ったと聞いて憤りを抑えられないんだけどどうしたらいいかな!?ねえ馬岱聞いてんの?おい聞けコラ」
「き、聞いてるよお!ネクタイ引っ張んないで首締まってるから!」
「あのね?いい年こいたくそおやじが美青年の関興くんの尻を撫で回したんだよ?嫌がる関興くんの尻を汚い手がぞわりぞわりと這ったんだよ?許せる?許せないよね、いつかそのくそおやじを探し出して生まれてきたことを後悔するくらい痛めつけてからブタ箱にぶち込んでやろうと画策してるんだけど、馬岱なんかいい案ないかな」
「うん、いろいろ聞きたいことあるんだけどどこから聞いたらいいのかなあ、関興が痴漢って、男なのに?」
「この腐りきった世の中常識なんてあってないようなものだから、それに関興くんて顔が綺麗だから男子の制服着た女子と間違えられたんだろうって張苞が言ってた」
「っていうかなんでそんなになまえが怒ってるわけ?もしかして関興に……」
「言ってなかったっけ、そうだよ関興くんに絶賛片想い中だよ!ああ腹立つ痴漢のくそおやじを今すぐぎったぎたにしてやりたい、消毒といわんばかりに私が関興くんのお尻に触れたい私が一番に触れるものだと思ってたのに悔しい!」
「ううん、これは、通報するべき?」

がくがくと馬岱を揺さぶって八つ当たり、悔しい悔しい!痴漢のくそおやじめ!ずるい!
さりげなく110番しようとしている馬岱をはたき倒して、悔し紛れに関興くんについて語り尽くすことにした。どれだけ可愛いか、誰よりも美しいか、なにしてもかっこいいとか、馬岱が白目剥くまで私は語るのをやめない。

「すでに白目剥きそうだよお」
「じゃあまずは出会い編」
「うっそ最初から!?」
「あれは今年の入学式……の後、新入生って初々しくって私も去年のこと思い出して、しみじみしながら下校していく新入生を眺めてたのよ、あそこの桜の下で」
「入学式の日って俺たち休みじゃ……ああ部活があったっけ」
「そ、私はちょこーっと休憩してて」
「サボり?」
「ぶっ飛ばすぞサボってたわけじゃないもん!そしたら木の上の方でガサガサ音がしたから鳥かなんかだと思って、ふと見上げたら人間が落ちてきたわけ!」
「それが関興?」
「うん、私の上にドシャーンって、ボディプレスかまされて死ぬかと思ったからどつき倒してやろうかと思ったけど、真新しい制服だったからとりあえず顔見たの」
「で?」
「あどけなくて初々しくてちょっとぽわぽわした表情にノックアウト、控えめにすみませんって言われて即許して名前聞いて、恥とかかなぐり捨てて会うたびに突撃かましてたら向こうから挨拶してくれるまでになった!」
「うわあ……猛々しい」

ちなみに、なんで関興くんが木から落ちてきたのか。桜の花をもっと近くで見たくて登ったら滑って落ちた、という理由。ちょっとドジで不思議ちゃんなところもたまらなく可愛い。

「あ、関興くん見っけ!」
「あ、ちょいなまえ!」
「関興くーん!お尻!お尻触らせてー!」
「逃げて関興!ちょい逃げてぇええ!」

20140311
20200422修正
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