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心臓が止まった。

と、思った。そのくらいびっくりしたということだ、本当に止まったら死んでしまう。

「か、かか、か……!」
「……」
「関興!」
「……ん」

いや「ん」じゃない。

執務室で竹簡の山と激戦を繰り広げていたところに、ぼんやりした我が物顔で入ってきた関興、声くらい掛けてから入ってきて欲しいと何度伝えても改善されないので、もう諦めている。

今の問題はそこじゃない、入ってきたところまではまだよしとする、問題はその後、するすると入ってきて竹簡と戦っている私の元へとやってくるなり真横へと立った。しばし私の顔をじっと見つめ、相変わらず何も言わずにその場へ跪くと、両手を伸ばして椅子に掛けている私に抱き付いてきた。

跪いた関興の目線の高さは丁度私の胸辺り、子供が母親に縋るような形のそれに戸惑った。関興は跪いて私の胸に顔を押し付けるようにして抱きついている!

「関興!」
「ん、なまえ」
「名前呼び合ってどうする!離れて!」
「……いやだ」
「離しなさい!」
「……むう」
「拗ねた!」

なんなの、私と関興って間柄は友達じゃないの?こういうことは恋仲の人にやるべきでしょ、あらぬ誤解が生み出される前に早急に引き剥がさないと。

「おーい関興が来てない……か……」
「ち、ちょ、張苞!?」

き、と扉が開いて顔を覗かせた張苞が言葉をしりすぼみにさせつつ、こっちをまじまじと見つめて納得したように次の言葉を吐いた。

「なんだ関興、やっと告白したのか、いやあよかったよかった両想いだったみたいだな!んじゃ、邪魔者は退散退散っと」
「え、はあ!?張苞ちょっと待て!待てってばちょっと!ねえ!ああもう関興説明!」
「……好き」
「はあああ!?」
「なまえを、愛している」

そそくさと、嬉々とした様子でいなくなった張苞の爆弾発言に頭がこんがらがる、両想いだと!?どういうことだ、と仕方なく混乱がてら、関興に問いただそうとしたら唐突に飛んできた好意、それと同時に尚もすり寄ってぎゅうぎゅう抱きしめてくる関興になす術がない。

しゃべるのにも行動するのも順序立ててからにしてください!私も好きだけどね!

20140228
20200422修正
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