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思春期も過ぎて自分でも随分と大人になったと思い始め、落ち着きを持ち出した頃、突然気付いた胸の奥で弾けるこの感情、色を付けるとしたら、きっと赤や桃、朱……そんな感じ。

昔はなんとも思っていなかったし第一ずうっとそばにいて、恥ずかしいこともドン引きされるような行動や発言もしたりされたりしてたのに。

「……壁ドンてさ、こんなに心臓痛くなるものなの?」
「恐怖、戸惑い、緊張、何であれ無関心でなければ上出来」

高校を卒業するにあたり私は来春から大学生、家を出て一人暮らしを始める予定でいるのだが反対してくるのは親でも兄弟でもない伯父。

仕事でいない両親、未だ学校の兄弟、空っぽのはずの自宅には伯父の張遼さんがいらっしゃり、私が帰宅して部屋に入ったらそこに居た、驚く間もなく突進してきて追い詰められ、壁ドン。

全然全く恋愛対象として見ていなかったから、普通に恋愛相談もしたし、張遼さんの初恋とか初体験の話を参考程度に聞いたりした。律儀に事細かに教えてくれたけど、今思えば嫉妬して欲しかったのかなあ。

「この地から離れるというのならば」
「一生帰ってこないわけじゃないし長期の休みには帰るけど」
「一人暮らしなどとそんな!恐ろしい!」
「親でもない張遼さんが何を心配してるのかわかんないけど、誰かが帰ってきてこの状況を見られる方がずっと恐ろしい」
「心配は無用、今日は誰も帰ってはこない」
「はあ?」
「兄と兄嫁は残業、凛太朗は友人宅に泊まると言っていた」

凛太朗は私の弟、っていうか聞いてない!なんで?私だけ聞いてなくて張遼さんが知ってるっておかしくない!?

「とにかく、私はなまえを姪だ家族だと思ったことは一度もない」
「今更だけど何それ怖い」
「なまえが大学生になる時手を出そうとずっと耐えてきた」
「やだもう今すっごい怖いんだけど、幼い頃の私ってば常に危険と隣り合わせだったとか泣ける」

顔面が近い、至近距離の顔と顔、鼻なんてもう少しでくっつきそう、張遼さんてこんなに整った顔してたっけ。

「ずっと好きだった、今もこれからも好きだ」

急に言われても困る、張遼さんのことそんな風に意識とか異性としてとか見れるわけないじゃん!

……と声を大にして言うつもりだったのに、それなのになんでこんなにドキドキして、張遼さんの顔を見ることが出来なくなって、このスキップしたくなる衝動どうにかして!

20130930
20200421修正
たぶん拝啓おじさまのボツ
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テーマ「人外ファンタジー」
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