short | ナノ
今日はハロウィン、といっても自分には縁のない行事だ。至るところでかぼちゃのオーナメントや黒とオレンジの二色がひしめき合って、可愛らしくデフォルメされた吸血鬼やゾンビが飛び交っている。

トリックオアトリート、そんな言葉やお菓子や何か小道具を使わなくたって、悪戯したい時にはやろうと思えばいつだってできる。夢も希望もへったくれもない、と言われてしまえばそれまでだが、本当のことなのだから仕方がない。

そういった考えは俺だけではなくなまえも同じらしく、行事だなんだで浮かれることはほとんどない。ハロウィンだけではなく、クリスマスでさえもわりとドライだ。


「ハロウィン、か……」
「え、今日?」
「ああ」
「ふーん」


こんなものである。たまたまかぶった休日、特に出掛ける予定もなく何をするわけでもないが、なまえはなんとなく落ち着くから、と俺の家に来て一緒にごろごろしながらぼんやりしている。
俺自身も人混みは苦手だから家でまったりする方が好きだ、別に出掛けるのがいやだってわけじゃない。家だろうが外だろうが、なまえが隣にいればどこだっていい。


「徐庶ってさ」
「うん?」
「私のどこがよくて付き合ってるの?」
「え、ええと、好きだから?」
「そこなんで疑問なの、っていうかどこが好きかって聞いてるんだけど」
「どこって全部……じゃあダメって顔だな」
「具体的に」
「今日はやけに突っ込んでくるじゃないか」
「たまにはいいでしょ」


そうだな、と俺は少し考えた。
本当に全部なんだ、一緒にいて安心するしなんとなくお互いに以心伝心している気がするし、本や映画の好みも似ている。身体の相性だってすごくよかった。


「気質が似ているところも、かな」
「私はそんなにネガティヴ思考じゃないと思うんだけど」
「ひどいな、同じとは言ってないよ」
「あはは、ごめんごめん」


どちらからともなく寄り添って、寄りかかり合って、同じタイミングで笑う。


「なんか小腹すいちゃった」
「そういえば駅前の店でかぼちゃのタルトが期間限定で売ってたっけ」
「食べたい!」
「買いに行く?」
「行く!」
「なまえ」
「ん?」
「ちょっと」


いそいそと支度をしようと離れたなまえの腕を捕まえ、振り向かせて唇をさらう。突然のことに一瞬目を見開いたけれど、すぐに甘受。唇が名残惜しげに離れ、なまえはハロウィンだから悪戯のつもりかと尋ねてきた。
ええと、そういうことにしておこう。

7thハロウィンフリリクのサルベージ
20150331
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