ベタに魔女か狼かミイラか、あるいは定番中の定番で吸血鬼、そんな仮装をいくつか予想していたんだが、目の前のなまえは俺の予想を遥かに上回っている。
斜め上なんてもんじゃない、んんん困った。どういうリアクションをすればよいのやら。
「あー……その、なまえ?」
「トリックオアトリート!賈クさんお菓子ちょーだい」
「え、ああ、用意はあるが……ええと、ほら」
「やったあああ!チョコレートの詰め合わせキタコレひゃっほおおお!」
(いたずらはいいのか……?)
「賈クさんありがと超おいひー!」
さっそくあげたチョコレートを頬張るなまえは犯罪級の可愛さだ。目に入れても痛くないのは当たり前、何かというと口に入れたいんだがね。
確かになまえ自身は可愛いんだが……この仮装、際どいにもほどがある。
一応予想はつくが、聞いた方がいいのか言うまで待つべきか……チョコレートを幸せそうに頬張るなまえをじっくりしばらく眺めながら、俺はそれとなく聞いてみることにした。
「んーなまえ、お菓子もいいが悪戯はいいのか?」
「はひ?だって賈クさんチョコくれたし、悪戯できないよ?」
「まあそうなんだが、いつものなまえなら『お菓子くれても悪戯しちゃうー!』なあんて言いそうだと思ったもんでね」
「私もそこまで子どもじゃありませんー!とは言っても、その言い方だとまるで悪戯して欲しいって言ってるみたいですけど?」
指先についた解けたチョコレートをぺろりと舐め取って、なまえが下から上目遣いに怪しく笑った。そういうのも悪くはないな。
「それとも、悪戯させてあげましょーか?」
「あっはっはあ、トリックオアトリート、こう言えばいいかな?」
「むふふ、私はお菓子を用意してませーん」
「それは困った」
「賈クさんもしかして、私の仮装にムラっときちゃったわけですか?」
「いやあ俺も困った困った、目のやり場に、ってね」
「サキュバスなまえちゃんにノックアウト、です?」
少し屈み気味に、なまえは胸を強調するようにきゅっと両肩を寄せて俺を覗き込む。一瞬ほっそりした脚に視線をやれば、なまえも追うようにして僅かに腰を振った。
今日はやけに挑発的、ご機嫌ななまえに遅れを取りながらも、惜しみなく晒された艶かしいくびれに手を添える。
「完全にノックアウト、だな」
追撃開始だ。
20150331
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