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悩みがなさそうだとよく言われる、気楽そうで羨ましいと不本意ながら。確かにぼんやりしたりしていることもあるが、私だって悩むこともある。最近なんて考えて悩むことばかりだ、だというのにそれでも人は私が能天気な楽天家に見えるらしい。

随分と節穴な目を持った人たちばかりで心底いやになる。


「なんだよ関興、機嫌悪いからって俺に当たるなよ」
「……別に当たっていない」
「当たってるだろどう見ても!椅子蹴んのやめろって!」
「……うるさい」
「あだっ!おま、脛……!」


昼休みの教室、前の席に座っているのは幼馴染の張苞、イライラしている気持ちを少しでも紛らわせたくて、私よりもずっとずっと能天気に焼きそばパンを頬張っている張苞の椅子を小突くように蹴っていた。

案の定お咎めをもらったのだがどうにも抑えることができず、椅子ごとこちらに体を向けた張苞の向こう脛を蹴る。余程痛かったのか、焼きそばパンを握りつぶして悶える幼馴染の姿を見たら思いのほかスッとした。


「どうせまたなまえだろ」
「……張苞」
「あ?いってえ!お、同じとこ蹴っ……!」
「……気安く呼ばないでほしい」
「あー!わーったわーった!ごめん!」


私がつま先を浮かせるのと同時に張苞はサッと向こう脛を隠す、つま先の位置を元に戻せば明らかにほっとしていた。


「……なまえのところに行ってくる」
「またかよ、いつかストーカーだなんつって後ろ指さされても知らねーぞ」
「……ストーカー?私が?……ありえない」


ストーカーというのは一方的に付きまとっている人のことを言うものだ、私は一方的ではない、だってなまえはいやがってなどいないし、いつだって楽しそうにしている。


「陰から覗いてるのがストーカー行為だっつの、そもそもなまえとお前は面識ねーだろ、会いに行くっつってもお前が一方的に見に行くだけ……」
「……うるさい」
「いってえええ!」


張苞はいつだって小煩い、できることなら私だって話しかけたい。隣に並びたい、ただタイミングが掴めないだけ。だから今はこれでいい、いつかきっとチャンスはやってくる、はずだ、と思う。

20140713
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