short | ナノ
たかがウノされどウノ、カードゲームにたった一回負けただけだというのにこの仕打ちは一体!敗者に強要された罰ゲームはえげつない、実にエグいものである。

于禁先生に悪戯をする、ハロウィンの時期だからってそんなこじつけなくたっていいのに、荒ぶる友人、焦ってる私。
ね、やめよ?于禁先生はやめよ?せめて夏侯惇先生か張遼先生で……え?だめ?友人たちの目は爛々ぎらぎらとしていて、若干怖い。

だってどう考えたって、そんなことしている暇があったら勉学に励めってものすごーく怖い顔で言われること請け合い。
それに于禁先生とは、その、あれだ。
内緒のお付き合いのあれだ!お堅いイメージがあるんだけど私の、引くほど凄まじい猛アタックに折れてくれて……って今はそんなことどうだっていい!

緊張と不安と気まずさが同居、放課後の部活が盛んなこの時間帯、校舎の中にいるのは文化部くらいなんだけれど、何故か今日はやけに静かだ。
廊下の曲がり角に隠れて、于禁先生を待つ。向こうの向こうでは友人たちが見張っているし逃げ場はない。

あっ于禁先生きた!

悪戯の手順はこうだ。
于禁先生と廊下の曲がり角でぶつかる、もちろんわざと。それでその勢いで押し倒して……後は流れでどうにか面白おかしくしてちょうだい!と、なんとも曖昧で投げやり。
無茶振りもいいところである。

向こうの向こうにいる友人たちが早く行けとジェスチャーで訴えている。ああ怖い!ええい、もいどうにでもなれ!

「おぉっとぅ!よろめいて転んじゃったァ!」

タックルよろしくやってきた于禁先生に突撃、思いのほか勢いが良過ぎてどこからどう見ても完全にタックルである。
案の定于禁先生は私によって後ろへと倒れこむ、なるようになってしまえ!と私は于禁先生へと馬乗りになり、見ているであろう友人達に向かって叫んだ。

「于禁先生躓いてしまってごめんなさーい!きゃー恥ずかしいすみませーん!」


完全に棒読み、散り散りになっていく友人達を見届けた後、私も急いで立ち上がると即座に回れ右。于禁先生に捕まって何を言われるやら、怖いからさっさと逃げるに限る。
顔も見ない!

ダッシュで逃げたつもりだった。

「待て」

真後ろから于禁先生の地を這うような声がする、なにこれこわい。
どん、と背中を押されてよろめいた先は非常階段の踊り場で、非常階段と言えば『非常』というくらいだから普通の階段より狭くて人通りもほとんどない。
壁に向かって立っていると、両サイドから于禁先生の両腕が壁につかれる。前に壁、後ろに于禁先生。

詰んだ、完全に詰んだ。

「ごごごごめ、ごめんなさ」
「……いたずらなどをして」
「ひっ!」
「私から逃げられると思うな」

怖いもの見たさという言葉がある、後ろを見なければ良かったと心底後悔した。
ものすごく怖かった、于禁先生は背が高いから威圧感が半端ない。怖かったけどちょっとかっこよかったな……とか思ってる私はきっと物好きだ。

7thハロウィンフリリクのサルベージ
20141118
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