short | ナノ
テーブルの上に広げられた多種多様のお菓子、そのほとんどが洋菓子で統一されて、見るからに毒々しいものもあれば、定番のようなものもある。

お菓子だけとは言わずにケーキやタルトの類も多種多様、かぼちゃを素材に使ったものまで実に豪華。


「……」
「見てください于禁さん、今日はちょっと贅沢してみました」


狂乱パーティさながらのテーブルの上、暴力的なまでの甘党による甘党のための宴、今日はハロウィンということで、トリックオアトリートを聞く前に悪戯を仕掛けてみた。
甘いものが苦手そうなイメージのある于禁さんが、悪い意味で甘い匂いに酔って、勘弁してくれ……的な台詞を言ってくれたら本望。
この私の、于禁さんを心底困らせたい魂がウズウズしたが故の行動である。ハロウィン関係ないって?まあまあそこは気にしない気にしない。

ああ、困ってる困ってる。
視線をふらつかせて口元に手を持っていくのは于禁さんが困っている証拠だ、本人は気づいていないみたいだけど、これ癖ね。
指摘はしない、だって言ったらその癖直そうとしちゃうからね。

さてさて、そろそろ別の反応が欲しいんだけど。


「……、」
「え?なんですって?」


ぽそり于禁さんがぼやく、独り言のようにも思えたけれどそうではないらしい、若干の期待を胸に聞き返してみれば于禁さんはもごもごと口を動かした。
言いにくそうではあったけれど、辛うじて聞き取れる程度に。


「……これは、その」
「ハロウィン用のお菓子です」
「それは見ればわかる、が、いや、しかし」
「んん?」


一人で自問自答しているようだ、何が言いたいのだろうか。


「……も」
「はい?」


于禁さんにしては珍しく歯切れが悪く、要領を得ない。しつこく聞き返せばようやくはっきりと口を開いた。


「これは私が、食べてもいいものか?」
「え、ええ……お気に召しましたら、どうぞ、好きなだけ……」
「む、ありがたい」
「……」
「頂こう」
「はあ、どうぞ」


ひょいぱく、于禁さんはかぼちゃのタルトに手をつけた。美味しそうに頬張っている、解せぬ。
次から次へと用意したものを片付けていく様は目が点になる。だって甘いものが苦手そうなイメージの強面を持つ于禁さんが!こんなに美味しそうにお菓子を頬張っているなんて誰が想像できようか!

想像も何も目の前にいるんだけどね、どうしようこの于禁さんすっごい可愛い。もぐもぐするその頬が妙に愛おしく思える。


「なまえ」
「あ、ハイ」
「お前は食べないのか」
「え、や、あの、ハイ食べます」
「これはどこで買ってきたのだ」
「パンプキンパイですか?それだけは昨日のうちに作っ」
「これが一番美味かった、よければまた頼みたい」


膝から崩れ落ちそうだった、悪戯のつもりがとんでもない、思いがけず褒められて有頂天である。何度も頷いてみせれば于禁さんはふと笑って、気付けばあっという間に大量のお菓子類を完食していた。
わあミラクルー。


「あ、あの、于禁さん」
「む?」
「ここ、ついてます」
「ああ、すま」


唇にパイのかけらがくっついていたので、私はそれを指摘しながらペロリと舐めとった。目を見開いて心底驚いた表情をした于禁さんに、ハッピーハロウィーン!と叫んで、懐に飛び込んでおいた。
びっくりドッキリ困惑させるつもりが、逆にびっくりしたので、不意打ちをかましたものの、ちょっと恥ずかしくなって、でも于禁さんのいろんな表情見れたからそれはそれで良しとする!

7thハロウィンフリリクのサルベージ
20141104
 / 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -