本陣から少し離れた拠点、そこに本陣を落とさんと押し寄せる敵軍多数、この拠点が落ちても本陣に影響はないけれど味方の被害は少ない方が断然いい。だから敵軍の流れをここで食い止める、気張って獲物を握る手に力を込めた。
しっかりと閉じられた門は衝車によってこじ開けられようとしていて、喧騒がもうすぐそこまで迫ってきている。
ここは絶対に抜かせない、本陣には行かせない、今にもぶち破られそうな門に足が竦みそうになる、今回が初陣でもなければ戦況が劣勢であるわけでもない。
これは数多の戦を経験してきた上での勘だ、迫り来る敵は手練れ、それもかなりのもの。今までとは空気が違う、もしかしたらこれが最期の戦になってしまうかもしれない、薄々感じる己の死期。
「孫呉の将共!覚悟せよ!」
凄まじい衝撃音と共に門は破られた、破片が吹き飛び襲い来る、一瞬は怯んだもののすぐさま駆け出し敵に焦点を合わせた。
……強い。
相手の猛攻に防戦一方でなかなか攻勢に移れない、無理をして突っ込んでも相手に隙を与えるだけで返って死期を早めるだけだ、しかし早く反撃に出なければ体力が持たない。
「これで終いだ!」
「っ!」
重い一撃によろめき、しまったと思った時には敵の刃が目前に迫っていて。
「……させん」
ダメだと諦め掛けた。
目を逸らして俯いたところに金属同士がぶつかり合う音、慌てて体勢を整えると大きな影が眼前に現れていた。
「何?援軍か!」
「周泰、様!」
「到来が思ったよりも早かったようだ、だが負けはせんぞ!」
「……なまえ」
「は、はい!」
「……援護を」
「はい!」
どんな手練れも二人なら苦もなく退けることができた、そもそも周泰様がお強いから簡単なこと、私の力なんて微々たるものでしかない。それにしても、本陣待機のはずである周泰様の手を煩わせてしまったことに罪悪感が募る。
不甲斐ない、拠点を任されておきながらこの失態、敵を蹴散らし閑散とした拠点で周泰様に頭を下げた。
「……構わん」
「私が力不足なばかりに……申し訳ありません」
「……俺のお節介だ、気にするな」
「周泰様……?」
ぽんぽんと頭の上に乗せられた大きな手のひら、拠点の維持を頼むとだけ言い残して周泰様はすぐに本陣へととんぼ返り、えっと、お節介とは?
去り行く背中を見つめて惚けていると、拠点の仲間が教えてくれた、誰も本陣に救援要請は出していなくて、周泰様がここに来たのは誰の命でもないってことを。
夢でも見ているのだろうか、颯爽と現れて死地を脱し助けてくださった、私のためだったのかと思うのはおこがましいかもしれない、でも思わずにはいられない、惚れる以外にできることが全く思いつかなかった。
戦は案の定、圧勝で幕を下ろした。
恋物語は突然に拠点にて6thフリリクサルベージ
20131226
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