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ソファに掛け、面白みのかけらすらも見当たらない深夜番組をぼんやりと見ていた。人の足を枕にして眠るなまえに、寝るならきちんと布団で寝ないと風邪をひくぞ、と声を掛けてみたが反応はない。

うたた寝どころか本気で寝入ってしまったようだ。起こして部屋に行かせてもいいのだが、あまりにも気持ちよさそうに寝ていたものだから些か起こすのが可哀相に思え、近くにあった毛布を掛けてやり、またつまらない深夜番組に目をやった。

くだらないギャグに野次を飛ばす若手の芸人に、甲高い声でヒステリックに叫ぶ年増の女タレント。不快極まりない。

こんなものに視聴率をくれてやる価値などない、面白くないことに対するささやかな報復としてテレビを消し、寝息を立てるなまえの頬を突いてみた。

「……う」

小さく身じろぎ、起きるかと思いきや、ころりと寝返りを打っただけで起きる様子は微塵もないようだ。

陶器のように滑らかな肌はほんのりと朱に染まり、頬に掛かった髪は絹のように美しい。無意識にも自分の咽喉が、ごくりと音を立てたことにひどく罪悪感を感じ、邪念を払うつもりで頭を振った。

その気になればこのままなまえを掻き抱くこともできよう、だが寝込みを襲うほど野蛮ではないと自負しているし、飢えてもいない。

今までもそうしてきたのだ、己の理性を押し止めるくらい造作も。

「……と」
「なまえ?起きたか?」

夢でも見て寝ぼけているのか、俺の膝から転げ落ちそうになるなまえの脇腹に腕を回し、引き上げる。横抱きにしながら足の間になまえを座らせると、うっすら瞼が持ち上がり、明かりが眩しいのか眉間にしわが寄る。

「起きたか?」
「うん」
「さっさと部屋へ行け、風邪をひく」
「連れてってくれないの?」
「何故俺が」
「だってほら、起きたら抱かれてるんだもん」

ぺち、と軽く額を叩いて、そのまま寝ていたのならそうしたかもしれんが起きたのなら自分で行け。そう言ってやった。

そんなこと斯程も思ってはいなかったが。

「えーケチー」
「ケチで結構」
「じゃあさ、一緒に寝よ!」
「……ガキじゃあるまい」

親にねだる雛鳥のように服の裾を引く、本人は至って無自覚だ。その発言、行動のひとつひとつに俺がどれだけ苦しめられているかをなまえは知らない。

もしかしたら時間の問題やもしれん。

理性は確実に削られていく、頼むからそんな目で俺を見るな、甘えてくれるな。

「ねーねー」
「っ、わかったから引っ張るな」
「やった!惇にぃありがとー」

時々自分でもわからなくなる、何故ここまでなまえを好きになれるのか、家族に対する愛情とは違う何か。

「……俺は、知らないからな」

ぷつり、と弾けたような音が聞こえた気がして、身体の奥から溢れ出してくるものに、自身でも手の付けようがないと悟った。


ノクターン
(愛おし過ぎて気が狂いそうだ)

20100120
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