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お菓子よし、逃走経路の確認よし、ターゲットの位置も把握、これより郭嘉先輩に見つからず捕まらず一日を乗り切ります作戦を実行開始。

今日はハロウィン、憎きイベント事のうちのひとつである。私は一年の中で嫌いな行事の第三位がこれ、ちなみに一位はクリスマスで第二位がヴァレンタインだ。
理由は簡単、年中行事にかこつけて郭嘉先輩に付け回されこねくり回され手篭めにされそうになるから。
「恋人同士というものはいつ何時も片時も離れることなく常に共にあるべきだ、私はそう信じているよ、可愛い可愛い子ウサギちゃん」
言っておくと私たちは全然そういう関係ではないのに郭嘉先輩が勝手に声を大にして激しく主張するのだ、とりあえず子ウサギちゃんやめろ、鳥肌。
おかげさまで郭嘉先輩ファンの皆様に私はいつも睨まれるハメになり、ヴァレンタインの時なんか郭嘉先輩は鬼気迫る様子の女子に追い掛けられながら私のところへやってくる。
せめて撒いてからにしてください、女子の殺意が私に向くからほんと勘弁してほしい。

だから行事毎に作戦を立てているのだ、郭嘉先輩から確実に逃げる作戦を!

「なまえ、捕まえた」
「ほああああ!」

でも大体失敗してるのが現状で、郭嘉先輩は私の一歩も二歩も……いや何十歩も先を行く。今回だってそうだ、さっきまで教室にいるのを確認したから急いで郭嘉先輩の教室から一番離れた図書室近くに来たのに!

「素直じゃないなまえもとても可愛くて、好きだよ」
「ひい!」

もう捕まった!ちくしょう!
フゥッと耳元に郭嘉ブレスを拭きかけられて背筋が凍りそうになる、こういうことは望んでいる人にしてあげてください!少なくとも私じゃないです!

「ふふ」
「何笑ってるんですかこわい!」
「本当になまえは可愛いね、悪戯したくなってしまうよ」
「冗談に聞こえないめっちゃこわい!」
「私はいつだって本気さ、トリックオアトリート、これも本気だよ」

郭嘉先輩の魔の手から逃れようともがいても暴れてもまるで効果がない、抜けられない、ひょろひょろしてるくせに!とは思うけれど男女の差ってやっぱり結構あるんだなあ。
悔しい、だがまだ負けたわけではない。これも一応は想定の範囲内で私の作戦はこれからが大勝負、郭嘉先輩のトリックオアトリートを聞いた今が反撃開始の合図。
ポケットに手を突っ込んで来るべき災厄に備えたお役立ちアイテムの出番である、つまるところ最初に装備を確認したお菓子、この世で最も屈強で心強い味方である『ママ』の名を冠する味を持つ、ミルキー様!

「これでも喰ら……え?ん?あれ……あれれ、あっれえええ!?」
「ん、どうしたんだいなまえ」
「ポケットに綿埃しか入ってない!」
「それは物悲しいね、それじゃあ私が可哀想で可愛いなまえにこれをあげよう」


恐ろしいほどに整った郭嘉先輩のご尊顔、眩みそうなほどの眩しい笑顔をこちらに向けて、郭嘉先輩が私に何やら手渡した。なんか見たことあるそれ。

「私が装備してたミルキー様アアア!」

何故そこに、なんて聞くまでもなく郭嘉先輩が私のポケットからスったのだ。間違いない。結局どんな対策を練っても完膚なきまでに越えられて看破、何もかもお見通し。

「ミルキーってとっても甘くて美味しいよね」
「え、ええ、まあ、はあ」
「私は好きだよ、なまえはどうかな?」
「き、嫌いじゃない、ですけど、それが何か……」
「ついでと言ってはアレだけど、私が食べさせてあげようと思っているのだけれど……如何かな?」

そのとどまるところを知らない美しさを撒き散らしながら言うセリフじゃないなって思いました。
今までに感じたことのない身の危険を覚え、多少の罪悪感を抱きつつも恐怖すら覚える美しいご尊顔に一発お見舞いして、私の純潔は守られたのであります。
ハロウィンこわい、行事ってほんとこわい。

20141230
20200423修正
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