子供の情景 | ナノ

おどけ、おどかし

早朝、まだ生徒も先生もぐっすりであろう時間帯、こっそりそそくさと元の自分の部屋に戻ったつもりが運の尽き、仁王立ちの同室者、まさに修羅と般若とは彼女らのこと、殺気立つ伊代たん美代たんにお出迎えされて血の気とグッバイさようなら。

我愛羅のところへ回れ右をしようとしたけれど襟首をしっかり掴まれてあえなく捕縛。

「ごめんなさいました」
「なまえ、ぶちかまされたいならそう言ってくれればいいのに、ねえ美代」
「気が済むまではたき倒してあげるのにね、伊代」
「申し訳ございませんでした勘弁してください」
「よくもあの田中と中田を寄越してくれたわね、最悪の夜だったんだから」
「この際だからベランダからダイヴさせておけばよかった」

怒った双子の美人姉妹は怖かった。

もう二度としません、後でお昼をお奢りしますのでどうかお怒りをお鎮めくださいごめんなさい。渾身の土下座、中田と田中とは入れ替わりだったらしい。

怒り具合は本当に修羅と般若のようだったが、申し出た条件にご満悦の様子、よかった女神の微笑みだ、そんな双子の姉妹にほっと胸を撫で下ろした。

「で、なまえ」
「あなた一晩中どこにいたの?」
「え、我愛羅のとこだけど」
「「我愛羅のとこ!?」」

ダブった同じトーンの声、我愛羅の名前に過剰な反応、この二人もそんな反応か。我愛羅がこんなに悪名高いなんて、勘違いいくない!ちょっと面倒くさいけど夕べの出来事ざっくりと話して聞かせた。

あれっ、そういえば昨日伊代と美代が私を置いて帰ったりするから迷子になっちゃったんじゃないの?ねえ何で私置いていかれたの?ねえねえ。

「煩いわね、なまえがちょろちょろして勝手にはぐれたんでしょう?」
「スマフォを持たずに折り畳みの傘だけ持つっておバカさんなの?」
「何かもうやるせない……」

とにかく、我愛羅は全然怖い子じゃなくてむしろすっごい優しいい子だからっていうのを強調して、本日の班行動を一緒に行くんだけどいいよね?大丈夫大丈夫、もれなく田中と中田が付いてくるけど荷物持ちにすればいいと思うから!

嫌な顔二つ、生ゴミを見るかのような目付きに怯みながら渾身の土下座、田中も中田も言うほど悪い奴らじゃないから!ね!

「我愛羅が一緒ってちょっと緊張するよね、伊代」
「暗い噂の人だもんね、美代」
「待ってほんと待って!我愛羅いい子だから、ほんといい子だから!噂ってデマだから!」


そういうわけで自由行動の時間がやって参りました、先生の話長いしくどいし、ああもうはいはいわかったわかった。注意することなんか修学旅行のしおりに全部書いてあんだから、それ読んでおけばいいんでしょ、そうでしょ。読む気ないけど!

ぼーっとしながら先生の話早く終わんないかなあ、と思ってふと周囲を見回していたら隣のクラスの列の中に我愛羅を見付けた。居心地が悪そうに少し俯き加減の顔。

こっち向かないかな、こっち向いてー我愛羅やーい。

あ!こっち向いた、小さくブイサインをしてみせたら少しだけ笑って、すぐに焦った表情を作った。なんだろうと思った矢先に誰かが私の頭をこつんと突ついた。あ、カカシ先生チィーッス。

「こーらなまえ、ちゃんと話を聞かなきゃダメでしょーが」
「げ、カカシせんせ、他のクラスの私にまでお説教とかないわー」
「仮にも去年担任だったわけだし、他のクラスだとか関係なく先生としての職務を全うしてるだけよ、俺は」
「そんな寝起きみたいな顔で言われても説得力な……いたたた!」
「ハイハイお口チャックだぞー」

はいじゃあ皆さん気を付けて、その言葉を合図に生徒達は蜘蛛の子を散らすようにサーッと散り散りになっていく。
もちろん私も例に漏れず、真っ先に我愛羅を捕縛しにかかった。

20141118
20150109加筆
20201207修正
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