子供の情景 | ナノ

おやすみこどもたち

今もまだ田中と中田はベランダだろうなあと想像しながらベッドにもぐった。

「なまえ、本当にここで寝るのか」
「なに、だめ?」
「いや、だめじゃないが」
「へーき、もう先生達もさすがに寝てるって」

反対側のベッドに目元だけ出して我愛羅がもごもご何か言ってるけど聞こえない、これこそ修学旅行の醍醐味でしょ、先生達にバレないように別の部屋で寝る。

「明日は……っていうか日付跨いだから実質今日なんだけどねー予定がいっぱいだよ!」
「予定?」
「自由行動でしょ、いろんな屋台言ったり神社でお神籤引いて、あ!お守り買お、お守り!」
「自由行動といってもコースは決まって……」
「あーもー固い固い、コースなんかあってないようなもんだから気にしない!」
「だが俺となまえは班どころかクラスが違う」
「自由行動だしうちの学校人数多いからどこに誰が混ざってもわかんないからいーのいーの」

余計な心配しなくていいから黙って……いや普通におしゃべりしながら私についてくりゃいいの、我愛羅のお役目は地図を読むこと、行き先のプランはお任せあれ。

「もうむちゃくちゃだな」
「そうだ我愛羅!」
「なんだ」
「電話番号とか教えてよ」
「俺の?」
「他に誰がいるの、ほらスマフォスマフォ!」

起き上がって自分のスマフォを出しながら急かした、のろのろ起き上がってスマフォを出した我愛羅、ぴろりんとデータの送受信。

「が、あ、た、ん、と」
「……迷子のなまえ、と」
「ああん、それやだ!ごめんなさい我愛羅ね!ちゃんと我愛羅で登録するからー!」

慌てて訂正、フリックフリック。

スマフォを枕元に置いてまたベッドにもぐる、我愛羅って家どこなんだろ、修学旅行終わったらお昼一緒に食べたりしてくれるかな、修学旅行のあとは次に学園祭もあるし、我愛羅って部活なにやってんのかな。

僅かな沈黙と布団の擦れる音、もそもそ動いて我愛羅の方を向きながら聞きたいことがいくつも浮かぶ、視線がぶつかって、我愛羅がなんだか気まずそうに視線を彷徨わせた。

もっといろいろ突っ込んでくれればいいのに、私にももっといろいろ聞いてよ、もっともっと話がしたい、そう思い始めたらぼんやり瞼が重たくなってきた、むにゃむにゃと意味のない音が口をついて出てくる。

我愛羅には不思議な魅力がある、おかしな噂さえなければ今頃こうして私といることはなかったと思う、逆を言ったら失礼だし不謹慎だけど、独りぼっちだった我愛羅と友達になれた。

「ね、我愛羅」
「なんだ」
「そっち行っていい?」
「……は?」
「だめって言っても行くもんね!」

自分のベッドから飛び出して我愛羅のベッドにダイヴ、スプリングは弾むが音があんまりしないところがちょっとグレードの高いホテルのいいところ。面白いくらい慌てる我愛羅にのしかかる攻撃!

「どしゃーん!」
「ぐあっ!」
「ちょっと大袈裟!」

サッと同じ布団にもぐり込んで向かい合う、出ていこうとするからパジャマ代わりのジャージを掴んでやった。

「一緒におやすみ!」
「お、おい!」
「朝は出来れば早めに起こしてほしいなー」

長い長いため息の後に蚊の鳴くような声でのおやすみ、いい夢見ろよって言ったらちょっとだけ笑ってた。

おやすみ我愛羅、また明日。

20130507
20201207修正
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