子供の情景 | ナノ

意に反して

全く面白くないボケをかますタレントに、進行役が的外れな突っ込みを入れているバラエティ番組、巻き起こるわざとらしい笑い声が不愉快だったけど元より真剣に観ているわけじゃなくて、単なるBGM程度に付けてあるホテルの一室の備え付けテレビ。オセロもトランプも飽きて、ひたすら他愛ないことをしゃべり続けた私、そろそろ就寝時間だから先生達が見回りに来るかもしれない。

ノックの音を聞き逃さないようにテレビもしゃべる声のトーンも少しだけ落とした。

「先生達、見回りにくるかな?」
「部屋に戻らなくていいのか、正座はいやだ」
「もー我愛羅ってばまだ正座の話?」

ちょいちょい蒸し返してくる部屋に戻らなくていいのか発言はもう耳タコだよ、要は先生に見つからなきゃいいわけで一定の見回りが終われば先生達の心配もいらなくなる、きっと大丈夫だと私の勘がそう言ってるから!

「しかし……」
「はいはい、だから万が一の保険があるわけですよ我愛羅君、おわかり?」
「保険?」

何の話だと訝しむ我愛羅、君ってばもう忘れちゃったのかい、同室だった田中と中田の存在を!万が一の場合はあいつらのせいにしてどうにかこうにかうまく切り抜けるから心配ご無用。

「修学旅行という一大イベントを十二分に満喫しなくちゃきた意味がないでしょうに」
「それでも節度は守るべきなんじゃないか?」
「ダメダメがあたん、ちょっとハメを外すくらいが丁度いいのよ、こういうイベントは!」
「変な名で呼ぶな」

ムッとした我愛羅、笑って軽く流せば深々とため息、幸せ逃げちゃうぞー?

それでひとしきり遊んでしゃべりつくして何時の間にか時計が深夜を数えていた、先生の見回りがあるものだと思ってしばらく身構えていたが、どうやらもう来ないようだ。我愛羅の部屋に遊びに来たからには思い出いっぱい無理してもオールするぞー!なんて密かに意気込んでいた当初、昼間にテンションを上げ過ぎたせいなのか、割と眠たい。

我愛羅も目がしょぼしょぼするようで、時折ぎゅっと目を閉じている。

「先生達来ないみたいだしお風呂入ろっかな」
「え」

ぎょっとした顔でこっちを凝視してくる我愛羅、いや別に一緒に入ろうなんて言ってないから、何そんなにびっくらこいてるのかなまえちゃんがびっくりだよ。

「じゃあ先に我愛羅入れば?」
「い、いやそういう問題じゃ」
「じゃあ何?」
「だから、その」
「あー!我愛羅ってばヤラシーことでも想像したんでしょーむふふ!」
「いや、それはしてない」
「そこ真顔ですか」

もうね、田中と中田は帰って来ないと思うのよ、伊代たんと美代たんにベランダに追ん出されて、近くにいるのに拝めないっていう焦らしプレイという名のご褒美もらってるからね、今更私が部屋に戻っても二人から田中と中田に部屋番号を教えた報復を受けるのは目に見えてる。

「……ここで、寝ると?」
「だめ?」
「いや、しかし」
「だってきっと私部屋に戻っても入れてもらえないもん絶対!我愛羅はそんな私を見捨てるの?私に部屋の外で寝ろって言うのね!」
「そ、そこまで言ってな」
「我愛羅のいじわる!ひどい、鬼畜!」
「わ、わかったわかったから、もう何も言わない!」

泣きそうな顔をしてみせれば我愛羅は面白いほど慌てふためいて、わかったから!と繰り返す、へへへ、ちょろいもんだぜなまえちゃんてば女優になれるかもしれない演技力。じゃあ先にお風呂借りるね、と言って立ち上がっても我愛羅はうな垂れながら、ああ……としか言わなかった。うん、少しくらいヤラシーこと想像してもっとわたわたするところ見たかったんだけど、我愛羅はソッチ方面には疎いらしい。つまらぬ。

先生達の監視の目を掻い潜って、決死の覚悟で自分の部屋から持ってきた着替えとお風呂セットを持ってバスルームへ。

広めのユニットバスはぴかぴかに磨かれていて清潔感が溢れてる、うちの学校はどちらかと言うと割とお金持ちな方だ、マンモス校でひと学年は12クラスの大体500人前後、さすがにそんな大人数で修学旅行には行けないから6クラスずつの半分に分けられて日にちをずらして決行される。私は1組で我愛羅は確か隣の2組。そういえば明日はグループ行動だ、クラス関係なく他のグループと混ざっててもとやかく言われることはないだろうから、我愛羅のとこと一緒に行動出来るかも。

浴槽にお湯を溜め、ごしゃごしゃ頭を洗いながら明日の予定をシュミレーション、伊代たんと美代たんは嫌がるかなあ、ちゃんと説明すればきっと大丈夫だよね。体も洗い流して並々お湯を張った浴槽に浸かる、はー極楽極楽、のぼせないうちに出ようとして私はようやく気が付いた、バスタオル持ってくるの忘れちゃったてへぺろ。

「我愛羅ー!」

半ば叫び声に近い声を上げればドアの向こうで我愛羅が焦ったようにどうした!と返事をくれた、ドアをほんのちょっぴり開けて覗くように顔を見せれば我愛羅がハッとしていて急に真っ赤なになって慌ててその場から飛び退いてしまった。

「あー待って我愛羅」
「お、お、お前は恥という言葉を知らないのか!」
「今それどころじゃないから、お願いバスタオル取って」
「さっさと閉めて服を着ろ!」

投げつけるように投げられたバスタオル、いやあ、いいものが見れた。別に隠すべき場所が見えていたわけではないのだからそんなに焦らなくてもいいのにね。着替えを済ませて助かったよーと言いながら出れば我愛羅は怒ってた。

「お前には危機感はないのか」
「はい?」
「もし俺でなく他の男だったらどうなっていたことか」
「我愛羅は欲情とかしないの?」
「い、今俺のことはどうでもいい!とにかくなまえはもっと危機感や恥じらいを」
「わかったわかった、ごめんごめん」
「本当にわかったのか」
「うん、なんか我愛羅ってばお母さんみたい、早く我愛羅もお風呂入りなよ」

タオルで濡れた髪を乾かしながら話し掛ける、我愛羅はまだ顔を赤くしたままぶつくさ呟いていた。

うむむむ眠い。

20130507
20201207修正
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