WEEKLY☆KAZEKAGE | ナノ

とっ捕まえた時は案の定冷えきってひどく冷たい、寒さに震えている我愛羅を抱えて自宅へ、全力で駆け抜けている間はずっと無言だった、我愛羅は何か言いたげに何度もこちらを見つめてもぐもぐと口を動かしていたが、私があえてそれに気付かないふりを続けた。

荒々しく自宅の扉を蹴り開け鍵を掛ければ、我愛羅はびくりと腕の中で震える、そうだ私は怒っているのだ、我愛羅を攫われ危うく違法な臓器売買の商品にされかけたことに。口を滑らせてしまったとはいえ、迂闊なことを口走った自分に怒りを覚えている、何の気なしの言葉でも今の我愛羅は傷付きやすく、脆い。

わかっていたはずなのに迂闊だった、無性に自分に腹が立つ、抱えていた我愛羅をそっと降ろし背を向ける。明かりを点けることも忘れてた。

「我愛羅」
「……っ」
「先に寝てて、私は調べてもらってたさっきの液体の結果を聞きに行ってくる」

まるで八つ当たりだ、こんなに愛してるのにどうして信じてくれないの、なんてそんなこと言わなくたって答えは出てる、疑心暗鬼が常だった幼い頃の我愛羅、無償の愛を知らない子供に信じろと言っても無理がある。

私が頭を冷やさないと、そう思って裏口から研究施設へ向かおうとしたら、外套を引かれ反射的に振り返る。溢れて零れた涙を拭いもせずじっとこちらを見つめて、嗚咽だけは漏らさないようにときつく固く唇を噛む我愛羅、驚いて体ごと振り返り同じ目線の高さへと屈む。

「我愛」
「い、行かな、いで……おねが……ひとりに、しな……っ」

えずきそうな勢いでしゃくり上げる我愛羅は小さな両手で外套をきつく、離すまいと握り締めていた。ざわつく胸中に燻っていた熱がスッと引くのがわかる。

「バカだなあ、もう」
「ご、ごえ、ごめんなさい、ごめん、なさ」
「謝らなきゃいけないのは私の方なのに」
「……?」
「ごめん、我愛羅」

今の我愛羅がいらないわけじゃない、小さくても大きくても記憶があろうとなかろうと、みんな同じ我愛羅自身、風影の我愛羅が好きなわけじゃない、全部全部引っくるめて『我愛羅』という人を、存在全てを愛してる。私はただ理由が知りたかっただけなんだ、我愛羅が小さくなってしまった理由が。

ぐっと引き寄せて泣きじゃくる小さな存在を、ここに在るという実感をさせてあげるためにしっかりと痛いくらいに抱きすくめる。細く頼りない双肩の震えが早く止まるように、2、3度背中をさすって腕を離した。未だにしゃくり上げる我愛羅は名残惜しげにこちらを見つめ返している。

「我愛羅、ごめんね」

抱き締めるだけでは物足りない、そう訴えかけてくる瞳にどうしろと尋ねかけて出かけた言葉を飲み込んだ。いつもの我愛羅にするような、またはされるような愛情表現をしてあげるべきなのだと、多分目の前の我愛羅もそれを望んでいるんだと思う。

マシュマロみたいな柔らかい頬を両手で包み込む、目元の涙を指先で撫でるように拭った、すん、と鼻を鳴らし期待の篭った我愛羅の視線が刺さる。

ひどい罪悪感まるで犯罪者じゃないか、今更な話。ばっちりショタコンである。でも仕方ないのだ我愛羅が求めているんだから!誓って犯罪者になるつもりはないと豪語したあの時の自分にも心の中で謝っておく、両手で包んだ我愛羅の両頬を軽く持ち上げるように上を向かせて自分の唇を重ねた。

ぴくりと反応した我愛羅は嫌がるどころか全体重をこちらに掛けて、もっともっととせがんでくる。

「……っふ、ん」
「があ」
「ん、すき、なまえ、すき」

ちゅ、ちゅ、と小鳥みたいな軽いキス、マシュマロよりももっと柔らかくて熱を帯びた我愛羅の唇が思っていた以上に心地良い、もうこの際犯罪者になってもいいや、もう一度我愛羅の両頬に手を添えて唇を重ねる。

柔らか……い?いや、さっきとは感触が違うような。

「ん、んぅ!?」

そこへ突然唇を割って捻じ込まれた生温かいもの、それが舌だと気付いてすぐに閉じかけた目を開ければ我愛羅が居る、いつもの彼が。すかさず後頭部をがっちり固定されて身動きが取れなくなった、ちょっと待って何が起きた!

形成逆転とでも言うのか、さっきまで私が我愛羅を包む形でいたのに今は我愛羅が私を包む形で佇んでいる。

「ちょ、が、んっ……んん」
「は、なまえ……ん」

片手が後頭部を押さえつけ、もう片方の手が腰を引き寄せる、ゆっくり押し倒されて後頭部の手が引っ込むと身体のラインをなぞり服を剥ぎ取ろうとし始めた。現状を理解しないまま流されるわけにはいかない、目の前にいるのはいつもの我愛羅、それならば容赦など必要ない!

「いい加減に、しな、さい!」
「ぅぐっ!?」

股関目掛けて勢いよく膝を持ち上げた、ドッ!と鈍い音を立ててクリーンヒット、途端に一瞬そこだけ時が止まったように我愛羅の動きが停止、これでもかと目を見開いて両手を股間に持っていくなり我愛羅は私の上に力なく崩れ落ちた。しばらくは再起不能のはず。

「な、にす……!」
「風影様?お聞きしたいことが山ほどございますので、お時間割いてくださいませこの野郎」
「っ!?」

痛みに悶え震えているのか、己のしでかしたことがバレたことの恐怖で打ち震えているのか、どちらでも構いやしないが事情聴取は時間を掛けてじっくりたっぷりしようと思う。

ぶり返してきた胸中に渦巻く怒りの炎、搾り甲斐がありそうねと笑ってみたが、我愛羅は頬を引き攣らせて情けなく呻いただけだった。

20130426
20201207修正
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