WEEKLY☆KAZEKAGE | ナノ

真相を掴む木曜日。

風影邸の我愛羅の寝室なう、ちんまい我愛羅を連れていつもの我愛羅の寝室を訪れた、事件現場である。

すっかり忘れていた現場検証、だいぶ遅れたが何故我愛羅が縮んでしまったのか原因を探るべくやってきた。記憶まで逆成長してしまったから原因の解明は難航、原点回帰で始めに戻ればきっと何か見つかるはずだと安易に考えていて、そんな簡単に見つかったら今までの苦労は……と思った矢先にあっさり原因解明の手掛かりが見つかった。

「これは」
「小瓶?」
「ねえ我愛羅、これに見覚えある?」
「わからない」
「なんだろう、少しだけ液体が残ってるね」

限りなく怪しい、ガラス製の少し気取ったようなお洒落なデザインの小瓶、僅かに残っていた中身の色は透明で無臭、さすがに味を調べるのは危険だから研究機関へ持っていって調べなければ。しかし何故こんな小瓶が?無造作に転がっていることで、我愛羅がこれの中身を飲んだであろう疑いが浮上する。

つまりこの怪しい液体を飲んだがために我愛羅は縮んだかもしれない、飲まされた可能性も無きにしも非ずだが、一国の長、風影の我愛羅に無理矢理飲ませるのはだいぶ無理がある、まず厳重な警備下にある風影邸にはそう簡単に入れない、風邪薬だとか何かと理由を付けたとしても余程の親しい仲の者でなければ可能性は限りなく低い。

それらを踏まえて考えれば、我愛羅が自ら進んで飲んだ可能性が一番高いわけなのだが、だとしても一体何のために。

「ぼく、何か飲んだの?」
「うーん、前にカンクロウに感化されて媚薬についての話を物凄く熱心に聞いてたことはあったけどねえ」

一抹の不安、私は一度だけ我愛羅に一服盛られそうになったことがある。媚薬の類だ、ちょっとした好奇心、ムッツリではあるが意外にも助平、あれはカンクロウがそそのかして我愛羅に媚薬を渡したのが発端、飲み物に混ぜて私に寄越したのだがその時の我愛羅の挙動不審さと言ったら。様子のおかしさから何か入れたなと気付いたのだ。

もしかして我愛羅は私にこれを飲ませようとしてた?

私達はお互いに幼い頃の面識はない、「もっとたくさんお前のことを知りたい」そう言われ、昔の話をしろと再三散々ねだられたこともあった。私がこの里にやってきたのは中忍試験……木の葉崩しのずっと後、我愛羅が砂の正規部隊に入ってから。まだ僅かに棘の残る我愛羅との初対面は言いようのない複雑な感情を分からないなりに察知した、ねじ曲がった自己愛しか知らなかった我愛羅が、木の葉崩しの一件で友情を知った。

まだまだ周りが見渡しきれない不安定な状態で様々な感情の波が我愛羅の周りを取り巻いていた、それはそれで戸惑い思い悩んでいたらしいことを聞いたこともある、昔の我愛羅はそりゃあこえーなんてもんじゃねえじゃんよ、そう教えてくれたカンクロウやテマリ。

それでもほんの少しずつ周囲に気を配るように、歩み寄るようになってきていることを私は遠巻きに見てきた、我愛羅と親し過ぎる仲になったことについては話せばとても長くなる。

「なまえ?」
「ん、なに?」
「ぼーっとしてたから、どうかしたのかなって」

少し昔のことを思い出していた、我愛羅の呼び掛けに意識が全て不安げな表情を浮かべている我愛羅に向く、大丈夫だと答えて笑えばホッとしたようだ。しかしそれも束の間。

「よし、研究所に持っていってこれが何なのか調べてもらわなきゃね」
「これ、ぼくが飲んだのかな」

不安定さが残る、あの頃の我愛羅が今ここに、目の前にいる我愛羅と重なる。

「調べなきゃわかんないし、早く元に戻してもらって本人に聞かないことには何とも」
「なまえは早く、風影のぼくに、戻ってほしい?」

俯き加減の表情が塗り潰されるように暗く淀み始めている、私はどこかで言葉を選択し間違えたかもしれない。気付いた時にはもう手遅れだった。

「……な、い?」
「え?」
「今のぼく、ここにいるぼくは、いらない……?」
「ちょ、我愛羅?何言って」
「やっぱり、ぼく、は……っ!」
「我愛羅!」

深読みのし過ぎだ。我愛羅はひどくショックを受けたような表情で、見たこともない勢いで走り去ってしまった、なってこったいやるじゃないかちんまい我愛羅!……いや、感心している場所じゃなかった、早く追いかけなければ。私は我愛羅がいらなくて早く元に戻って、と言ったわけじゃない、それでも我愛羅を傷付けるには十分過ぎる言葉だった。心に深い深い傷を負って少しでも突けば壊れそうな頃の彼を甘く見ていた、本当に些細な一言で簡単に崩れてしまう。

一刻も早く見つけなければ。

地を蹴り付け今までに出したことのない速度で駆ける、小瓶の中身を調べるのは後回しだ。闇雲に里中を隅から隅まで駆けずり回り、我愛羅の行方を追う。私はちんまいからと侮っていた、風影にまで登り詰めるまでになる我愛羅だ、気配を押し殺してしまっているようで、見付け出すのに骨が折れた。

里中を一巡りし終える頃にはもうすっかり闇に包まれていた、一度家に戻り外套を持ち念のために私と我愛羅専用の伝書梟、ムソルグスキに見付けた小瓶を括り付け、テマリとカンクロウに飛ばしておく。ちょっとばかり我愛羅とはぐれてしまったけど心配は無用、今日中に見付けてちゃんと保護するから、それとこの小瓶の中身を調べておいてください。

「里中探しても居ないってことは、残すところ里外れの……あの月がよく見える場所かな」

最後の望みを掛けて里の外れまで走る、何もない砂漠が延々と広がる中にせり出した岩山の群、一際高く大きな岩山のてっぺんに意識を集中させれば僅かに揺れる影を見た、我愛羅だ!よかった、ようやく見つかった、とっくに日が暮れて暗くなっている、砂漠の気温は昼夜で寒暖の差が激しく夜は寒さが厳しい、薄手の我愛羅はきっと震えているに違いない。

「我愛……!」

急いで駆け寄ろうとすれば揺れる影は一つだけではなかった。

「ガキが一人か」
「金目の物は何一つ持ってやしねえ」
「ま、それでも持って帰りゃ臓器くらいは売れる」
「若けりゃその分臓器も新鮮でたか売れるだろうな」
「違いねえ」
「……っ!」

抜け忍ではないようだが人攫い、密輸関係のバイヤーか、二人の男がじりじりと怯えうずくまる我愛羅に迫る。聞き捨てならない会話を耳にして湧き上がる憤怒、臓器を売るですって?誰が赦すかそんなこと!二人の男の薄汚い手が我愛羅に延びる。

「さあて、ガキの臓器は一体いくらに……」
「させるか馬鹿たれめがあああ!」

持てる力の全てをもって突撃、我愛羅を想えばその辺の大きな岩石くらい放り投げるなんて軽く朝飯前、人力岩石砲とでも名付けておこうか。投げ付けた岩石によって吹っ飛んだ二人の男、その隙に赤く腫れた目を見開いている我愛羅をすくい上げて一目散に駆け出した。

20130424
20201207修正
← / →

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -