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振り回され役の苦労人。

それがあの人の第一印象、この間たまたまAランクの任務で組んだんだけど、なんていうか、すっごく苦手なタイプだと思った。

雰囲気は優しい感じなんだけど、なに考えてるのかわかんなくて、人の腹ん中を探ろうとしてるのが微かに感じ取れた、カカシ先生のことを先輩って呼んでたし、高いランクの任務によく出てるらしいことから暗部の出ってことが推測できる。

「ヤマトさん」
「ん?」
「……あー、いや、やっぱなんでもないです」
「そう?じゃあ集中して、張り込み続けるよ」
「ええ」

それから今回もまた任務で一緒に組むことになったんだけど、どうしてツーマンセルなんだろう。前もそうだった、任務自体はランクが高いわけじゃないけど結構デリケートな内容だったりするから難しいといえば難しい。

抜け忍を追い掛けて捕まえるのが今回の任務、ただ、追い掛けてる抜け忍が重度の精神障害っていうか病んでるっていうか、ちょっと刺激しただけで自害だとか何をしでかすのかわからないような奴だから。

情報をたくさん持ってるらしいから、生かしたまま連れ帰らないといけないのだ。私よりもこういう任務ってシカマルくん達の班が適任だと思うんだけどなあ。

「僕と組むのはそんなに嫌?」
「いえ別に嫌ってわけじゃ……はい!?」

言われたことを理解するのにしばし時間が掛かって焦る、しまったつい本音を。

「顔に出てるよ」
「う、うそ!そんなはず」
「うん、嘘」

焦り損だ、嵌められた、にっこり笑ったヤマトさんに深くため息をつく、この野郎、迂闊に考え事も出来ないじゃないか、この人といると緊張して仕方がない。

「浮かない顔してたからね、カマかけてみたんだよ」
「……人が悪いですね」
「心外だね、少し緊張してたようだからそれをほぐそうと思ったんだけど」

緊張はあなたのせいです、とはっきり言えたらどんなに楽か。

「心臓に悪いのでもう少しソフトにお願いします」
「そりゃあすまなかった、まあ、ある程度の緊張感は必要だけどね」

随分とマイペースな人だ、人は見かけによらないというし、第一印象と中身が全然違う。どちらかというと振り回されているのは私の方。

「それじゃあなまえが言うように、別の方法で緊張をほぐそうと思う」
「そもそも私、緊張なんか」
「まあまあそう言わないで」

含むような笑みを浮かべるヤマトさんになんだか嫌な予感がする、任務自体にが緊張してないっつってんのにぐいぐいくる、張り込みに集中しろって言ったのあんただろうが!思わず叫び出しそうになるのを堪えつつ、ヤマトさんを見た。

丸い瞳に不安そうな私が映ってる。

「今回の任務、本当は別のチームが行く予定だったんだ」
「え、そうだったんですか?」
「うん、僕が無理を言って代わってもらったんだよ、ぜひなまえとツーマンセルでって」
「……何でですか」

わざわざ代わってもらう理由って何?私がヤマトさんと出撃するメリットは?少なくとも私にメリットはないんですけど。

「君に興味があってね、僕の個人的理由、少しでも接点が欲しかったんだ……よしターゲットが出てきたね、集中して行くよ」
「ちょっとちょっと!」
「しーっ!声が大きい、この話はまた後でゆっくりしよう」
「いきなりそんな……自分は言い逃げですか?今言わなきゃいけないことでした!?ヤマトさん聞いてます?」

意味深なことを一方的に言われ、ターゲットが出てきたからって放置、そこから集中と言われても出来るか!帰ってから言いますよね、普通。

「最後まで説明してくれないなら私ここから動きませ」
「任務が最優先だよ、少し黙ろうか」

ヤマトさんの背中に投げ掛けた言葉は最後まで紡ぐ前に、勢いよく振り返って私の肩を掴むなり、唇を塞いでくれやがったヤマトさんの唇に阻まれた。

「理由の半分は今、体現したからね」
「……な、な」
「もう半分は任務が終わってから、いいね?」

有無を言わせないその表情に、私はただただ頷くことしか出来ませんでした、身体に火が付いたかのような錯覚は決して気のせいではない。

全然意識してなかったヤマトさんに、完全に振り回されていると思い知らされた今日。




6thフリリクサルベージ
20131017
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