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私の好きな人はミツキ!
とっても紳士的だし博識だし何よりあの笑顔が最っ高にキュート、惚れる要素しか見当たらない。結構いろんな人に公言しちゃってるからもしかしたらミツキにも知られているかもしれないけど、ミツキの私への接し方は至って普通。

それがいいのか悪いのかはまだわかんないけど、嫌われてはいないと思う、たぶん、きっと。


「で、今日はなんなの?」
「あのねっ!あのねっ!今朝おはよって声掛けたらフワッって笑っておはよって返してくれたの!」
「……」
「そ、それだけ?」
「うんっ!笑い方が超キュートだったの!」


目の前に座るチョウチョウとサラダは随分とリアクションが薄い、それだけって言われちゃったけどそれだけでも嬉しいもんなんだよ、二人ともわかってないなあ。
ジト目でもくもくとハンバーガーを頬張るチョウチョウに私のチーズバーガーもあげるって言えば途端に満面の笑み。「なまえの惚気、あちしが聞いてやんよ、もっと他にないわけ?」サラダは現金ね、チョウチョウ……って呆れてる。


「あとは……あっ!」
「何、どした?」
「この間、腕がのびてすごいねって言ったらありがとうって!」
「……」
「……はあ」
「え、なんでため息つくの?サラダも見たことあるんでしょ?すごくない?あれ」
「あんたどんな話の振り方してんのよ、腕の伸縮褒められて嬉しいやつがどこにいんのさ」
「お、おかしいかな?」
「おかしいも何も、どう考えたってなんだこいつって思われてるんじゃないの?」
「そ、そうなのかな……うう、なんか急に恥ずかしくなってきちゃった」
「普通好きな食べ物とか聞くっしょ、アカデミーの女子で誰が一番可愛い?とかさあ」
「チョウチョウ、それはちょっと直球すぎない?」


どストレートにぶっ込むチョウチョウを冷静にたしなめるサラダ、誰が一番?なんてちょっと聞けないかなあ、暗に私も可愛いでしょ?って主張してるみたいっていうか、なんていうか。とにかくそれは恥ずかしくて聞けない。


「とにかくさ、あちし達にぶちまけてくれるのもいいけど、やっぱ本人に言いなよ」
「え、い、言うって……」
「好きってことを、でしょ?チョウチョウ」
「そそ、もうあちしら焦ったくって」
「で、でもそんなの、恥ずかしいし……もし迷惑とか言われちゃったら……私立ち直れないよ」
「ああもうしゃーんなろー!そんなの言ってみなきゃわかんないでしょ!」


テーブルを挟んでサラダに胸ぐらを掴まれた、そんなぐらぐらさせないでサラダ、視界がぶれまくってるから。クールそうに見えて意外と激情家っぽいところがあるんだよね。ちなみにチョウチョウは見た目も中身も想像通りって感じ。
そんなこんなでファストフード店に居座ること3時間ほど、店内の人はまばらで誰も私たちの他愛ない会話を気に止める人はいない。

ひとしきり私がミツキを如何に好きでいて、どんな会話をしたのかということをしゃべりそれについてサラダとチョウチョウが一つずつ突っ込んでくれていた。大半はつまらないだの会話の切り出し方がへたくそだのってダメ出しだったんだけどね。
それでもいいの、まだ遠くからそっと見て少し挨拶ができるくらいで十分だから。


「謙虚っていうよりただの臆病者って感じ?」
「全くしゃーんなろー過ぎてため息も出ないっての」
「うう、厳しいなあ」


がくりと肩を落としながら最後まで厳しい二人に視線を戻す、二人は何故か私を通り越した先を見つめて途端にぴしりと固まってしまっている。えっ、なになにどしたの?


「厳しいけど、僕も二人の意見には大賛成だよ」


真後ろから聞き覚えのある声がした、聞き間違えるなんてありえない。聞きたいけど今は聞きたくない声だ、声の距離がとても近い。


「それに、アカデミーの中ではなまえが一番可愛いと思います」
「っみ、みみ、ミツキ……っ!」
「やあ」


恐る恐る振り返った先には意中の彼、しかも後ろの席にいたなんて!植え込みがあったせいで全然気が付かなかった!
っていうかちょっと待って、ミツキは最初になんて言ってた?二人の意見に大賛成?二人の意見ってどの辺の会話を聞いて賛成してるの?
にこにこと私の大好きな笑みを浮かべているミツキにいつからそこにいるのかと尋ねてみた、彼は少し考えるような素振りを見せてさっきよりもにっこり笑って言い放った。


「君たちよりも前からここにいました」
「キャアアア!」
「ちょ、なまえ落ち着きなさいってしゃーんなろー!」
「あちしらより前って……もしかして会話全部聞こえてたり?」
「この距離だからね」


ミツキの笑顔が眩しい、眩しすぎる。その眩しさに目も頭も眩んでしまったらしい私は、相乗効果の羞恥によってフッと意識が遠のいた。遠くでみんなが私を呼ぶ声を聞きつつ視界はすでにブラックアウト、嬉し過ぎちゃったのかもしれないなあ、なんて。

20151119
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