小話 | ナノ

突然この暁という組織に連れ去られて早くも半年が経とうとしている、攫われた経緯というと、私が封印術に長けているからでこれを利用して尾獣をどうこうしようっていう魂胆らしい。封印術に長けてるのは事実だし、これだけは負けないって自信も大いにある。その他はちょっとイマイチなんだけどね。

今現在、基本的に私のお世話役というかお目付役というか監視役(これだ!)をしているのが芸術家コンビ……もといデイダラくんとサソリさんである。

利用されるって知って攫われたばっかりの頃はそりゃあもう怖くて怖くて、特に鬼鮫さんなんてもう恐怖の対象ナンバー1の顔だし、角都さんはナンバー2。飛段さんは全てにおいて危なそうで近寄りたくなかった。ヤク中だと思ったもん。リーダー格のペインさんと小南さんはよくわかんない、あんまり顔を合わせたことがないから。まあ攫ったのはこの二人なんだけどね。

だからその中でもわりかしまともそうなイタチさんか、年が近いっぽいデイダラくん、なんだかいろいろ無関心そうなサソリさんのそばになるべくくっ付くようにしてたんだ。
イタチさんは忙しそうであんまり匿ってもらえないので(すまなさそうに謝られた、悪い人なのに感動!)デイダラくんと一緒にいることが一番多い。

あ、それからデイダラくんは年が近いっぽいからデイダラ"くん"なんだけど、サソリさんは私よりも年下に見えるのにサソリくんって柄じゃない雰囲気を漂わせていてちょこっと近寄りがたい。

年下っぽいのにオトナの色気というかなんとも形容しがたい艶めかしさを持っていて、さん付け敬語にしなくちゃいけない気持ちになるんだ。(デイダラくんは贔屓だってむくれてたっけ)

デイダラくんとサソリさんは結構一緒にいることが多いから、デイダラくんのところに行けば必然的にサソリさんとも一緒になるわけで。


「ねえねえデイダラくん」
「うん?なんか用か」
「ちょっと聞いてもいい?」
「答えられることならな、うん」
「あ、別に大したことじゃないんだけどデイダラくんって幾つなんだろうなーって」
「なんだそんなことかよ、オイラは19」
「え、うっそ年上!?」
「うん?じゃあお前は?」
「私17」
「2個下か、ふーん」
「リアクション薄くない?」
「そんなもんじゃねえの?ま、それなりにイイ身体してるっぽいし、そこは合格だろ、うん」
「ちょっとどこ見てんの!さいてー!」


にやにやしながらデイダラくんは品定めするみたいな視線を寄越す、むっつりかと思ってたら思いのほかオープンスケベだった、デリカシーなさ過ぎ!モテないでしょ、って聞いたら怒ったので、多分図星。


「なあサソリの旦那、旦那もなまえのプロポーションはなかなかだと思うよな?うん」
「っせえな知るかよ黙ってろ、集中できねえだろ」


一緒にはいるけれどサソリさんは黙々と作業をしていて会話には不参加。一応聞こえてはいるみたい、そういえばデイダラくんはいつもサソリさんのことを旦那って呼ぶけどなんでだろ。旦那って年じゃないよね、だってサソリさんの見た目、私よりも年下の10代っぽいもの。まさかその若さで奥さんがいるとか?


「ねえデイダラくん」
「うん?」
「ちなみに聞くけどサソリさんは幾つなの?」
「旦那?えーっと確か、そうだな……おーいサソリの旦那ぁ、今年で幾つだっけ?」
「うるせえっつってんだろ、35だ」
「35ぉおお!?え、詐欺!」
「こう見えておっさんだぞ、旦那は外見だけは年取らないからな、うん」
「……チッ、余計なことしゃべってんじゃねえよ」


不機嫌そうにこちらを振り返るサソリさんの手には色とりどりの怪しい液体の入った瓶、まさか若返りの薬でも作って毎回飲んでいたりするのだろうか。いつまでもぴちぴちのお肌でいたい、若くて綺麗な俺でいたい!なんて願望でもあるのかな。女子か!


「おい」
「はい?」
「お前、これ飲んでみるか?」
「え?の、飲めるんです?」
「どうなるか教えてやろうか」
「……ど、どう、なるんです?若返る?」


サソリさんは私が考えていたことを全て見通していたみたい、座らせた目がすっと細くなって口元が歪む。とても35歳とは思えないうるうるの唇がたった一言。


「死ぬだけだ」


ひやり、冷たいものが身体中を取り巻いたような気がして黙り込む。私の反応に満足したのかサソリさんは「お前に飲ませるなんてもったいないことはしねえよ」と言って、持っていた瓶にコルクをはめて、ラベルで封をしていた。
ほ、本気だったのかな……いやいやいや飲まされてないから冗談だったってことにしよう、そう信じたい。タチ悪いな、なんて言ってるデイダラくんの言葉は聞かなかったことにする!


「それに、殺すのはお前が使い物にならなくなってからだな」
「……えっ」
「俺なりにお前とは通じるものがあると考えてる、封印術に長けてるっつったな」
「は、はい!」
「封印といえば、時間が経てば朽ちるものも、朽ちることなく留めておけるんだろ?」
「えっと、まあ、はい、できないことは……」
「すなわち永久の美、俺の趣向と限りなく近いものがある」
「え、永久の、美……?」


音もなく立ち上がり、サソリさんは私の前にくるとずいと顔を近付けてしゃがむ。近くで見る35歳の美少年、ちぐはぐな中身と外見のギャップ。陶器のように白い指先が頬に触れ、人のものとは思えない温度に驚いて思わずその手を掴んでしまった。なにこれすごい冷たい。

低体温にしては度が過ぎる、仮死状態とも言えない。


「どうせお前はここから逃げられない、だから特別に教えてやるよ」
「……っ」
「俺は人であることをやめた、俺こそが朽ちることない永久の美、究極の芸術」


外套を脱いだサソリさんの身体は本来の人とは全然違っていた、球体関節人形のそれ。触れられた時の質感は確かに人のものだった。でも、サソリさんのお腹……本来臓器が収まっているであろう場所には鈍色のワイヤーがある。

人傀儡を造れるのは旦那だけだぞ、永久の美ってやつには賛同できねえけどな、うん。デイダラくんの補足がとても不穏な響きでした。彼はあまり興味がないようで、一瞬の美こそが本物の芸術だ!とかなんとか張り合いだしている。


「ひと、くぐつ……?」
「そのままの意味だ、いつかお前も俺のコレクションに入れてやるよ」


いつかは殺される、攫われた時に覚悟はしてた。まだ死にたくないし、死ぬのはきっと今じゃない。怖いけど、実感が湧かなくて不思議な気分だった。それよりも、今はサソリさんの言葉にどうしてもつっこみたいところがある。
自分が究極の芸術って……とてもシュールだ。笑っちゃいけないんだろうけど。


「うん?なに笑ってんだなまえ」
「い、いや、はは、あは、人っていうのは死に直面すると無性に笑いたくなっちゃうもんなんですよ怖いのに、ふ、ぷふ」
「……」


あ、やばいサソリさんめっちゃ睨んでる。デイダラくんには「オイラ知ーらね」って言われちゃった!やめてやめてサソリさん、砂鉄集めるのちょっとタンマ!

20151113
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