小話 | ナノ

任務の帰り、今回同行して組んだ奴が報告に行ってくれたおかげで私は早々に自宅へ戻ることができた。

長期だったし疲れたから早く休もうと思ったんだけど、無性に我愛羅に会いたくなってシャワーと着替えだけ済ませて風影の塔に足を運んでみた。テマリとカンクロウには会わなかった、どこかに出てるのかな、ひっきりなしに出入りの激しい風影の執務室、少し離れた場所から人の出入りがなくなるまで遠巻きに様子見、すれ違った顔見知りに軽く会釈して、30分くらいぼんやり突っ立ってたかな。(元々疲れきってたし立ってるだけならなんてことなかった、でもはたから見れば不審者っぽかったかもしれない)

人の出入りがなくなって、閑散とした執務室周辺、ちょこっと顔を出して、我愛羅にただいまって言うだけ、すぐに帰るつもりで執務室の扉を開けようとして思い留まる。

人の出入りがなくなったのは我愛羅が膨大な量の書類に目を通しているからだ、前にもそんな光景を見たことがある、目を通して印を押す、単調な作業で一見楽そうだけど、これがまた地味につらい、そんな風に零していたっけ。疲れてるだろうし集中力を途切れさせてしまうのも悪いかな。

うん、やっぱり今日のところは帰ってまた明日元気いっぱいのところでゆっくり会った方がいいかもしれない。ドアに触れかけた手を引っ込め、半歩下がる、くるりと身を反転させて来た道を戻ろうと踏み出したところで、手首と腰に緩い違和感を覚えた。

何かが巻き付いた感覚、手首に触れたそれは見なくても感触ですぐにわかる、さらさらとした細かいもの、我愛羅の砂だ。

「……我愛羅?」

振り返ってドアを見たら、ほんの少し開いていてそこに砂が繋がっている、僅かに引っ張られているようで自然と口元が緩んだ。

「我愛羅、入るね」

薄く開いていたドアを軽く押すと砂もそれを手伝って、部屋の中に入ったと同時にドアは閉められ、さっきよりも強く引っ張られる。足元を掬われよろけたところをすかさず砂がクッションになり、我愛羅の元へ運ばれ真横に降ろされた。

ひどくやつれたように見える我愛羅、どうしたんだろう、私が長期任務に行ってる間、そんなに忙しかったのだろうか。

「ただいま」
「ああ」
「すごく疲れてるみたいだけど、私邪魔じゃない?」
「いや……それより、何故入ってこなかった」
「だから邪魔しちゃ悪いかなーと思って」
「会いたかった」
「うん、私も会いたくなってきてみた」

ふとひと息ついて、安心したように笑った我愛羅に胸がぎゅっとなって、飛びつくように抱き締めた。心配もしてくれてたんだなって気付いたらどうしようもなく愛おしい。

20140225
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