小話 | ナノ

まだまだ日の入りは先だというのにふと目が覚めはじめて、おもむろに寝返りを打つ。妙だな、寝返りが打ちにくい。というか動きにくい……?それになんかいい匂いがするような。もそもそベッドの中で身じろいで、うすらと瞼を持ち上げてみれば視界に飛び込んできたのは赤。えっと、赤?なにこれ髪の毛……髪の毛!?

びっくりして勢いよく起き上がろうとしてみたけれど、腰に何かが巻き付いていて起き上がることはかなわない。巻き付いているのは腕だ、赤い髪の毛の持ち主。


「さ、サソリさ……!」


なんで?何が起きてるの?昨日ベッドに入った時点では私一人だった、ベッドの中だけじゃなくてこの家の中にも、私一人だったはずである。っていうか鍵もかけたのに!どうしてサソリさんが我が物顔で一緒に寝てるんだろう。

焦って困った私はとりあえず現状打破ということで、サソリさんをベッドの中から追い出すことにした。しかし力任せに押し出そうとしたものの、顔に似合わずサソリさんはびくともしなくて、じゃあ私がベッドから出よう!と脱出を試みても案の定むりでした。

そうこうしているうちにサソリさんがす、と目を開けてしまい、至近距離で目と目がばっちりと。


「ひいい!何してるんですかサソリさん!不法侵入で訴えんんう!?」
「……っせえな、その可愛い口、塞いでやろうか」


やってるー!もうすでにやっちゃってるー!事後報告!なんか可愛いとか言われてるんですけどサソリさんのその口から可愛いなんて単語が出てくることに驚愕、いつもならそんなこと言わないのに、ブスかバカかアホかマヌケか地味に傷つくようなことばっかり言うのにどうしちゃったの。こわい。


「さ、さそ、んう、っふ……」
「物欲しげな顔してんじゃねえよ、めちゃくちゃにしてやろうか」


言葉遣いは相変わらずだけど、纏う雰囲気はこの上なく甘くて優しい、何度も何度も角度を変えては貪り尽くすようなキスが続く。おかしい明らかに様子がおかしい、ちょっと待ってくださいいつものサソリさんじゃなくて怖いけど、これはこれで……とか思い始めてる自分が一番!怖い!
どうしようどうしようどうしよう、何の解決策も見いだせないまま、するするとサソリさんの冷たい手がパジャマの中へ侵入して腹部と腰をなぞりながら上がってくる。きゃあああ!


「なまえ、安心しろ全て俺に委ねておけ」
「ひいい!」


胸をやわやわと揉まれながらサソリさんは器用に口で私のパジャマのボタンを外していく、なにこの人すごいなんて感心している場合ではなかった。


「ちょおい!旦那ァアア!」


そんな時、バァン!と部屋の扉が勢いよく開け放たれ、これまた勢いよくデイダラくんが突入してきた。ナイスですデイダラくんグッジョブ!情けない声でデイダラくんに助けを求めれば、ほんのり頬を染めて「だだだ旦那ァ!待ってろなまえ、旦那はさっき変な薬を調合しててそれをかかか被ってだなァ、ウン!」挙動不審になりながらも助けてくれるようだ。すごいどもってるし声も裏返ってる、それもそうだ、私は半分脱げかけであられもない姿。

そっか、サソリさんの様子が変だったのはそのせいだったんですね。真っ赤になって極力私を見ないようにサソリさんを引っぺがしにかかったデイダラくんに手伝って、私もサソリさんを押し返す。ふと黙ったサソリさんを見れば、「ひっ!」思わず声が上がる。


「……デイダラァ……てめえ」
「いくらなまえが可愛いからって薬の力に頼って襲っちゃまずいぞ旦那、うん」
「ひいい、でででデイダラくん!」
「大丈夫だなまえ、旦那はひとまずおいらが連れ帰」
「砂鉄解放!」


サソリさんの一言で真っ黒な砂鉄の塊がデイダラくんに襲い掛かる、ひえええサソリさん完全に目が座ってる!いやそんなことよりサソリさんここ部屋の中!こんな狭いところでそんな大技使わないでください!


「邪魔すんじゃねえよ……ソォ、ラァアア!」
「ちょ、旦、ぎゃああ!」
「で、デイダラくんんん!」


開け放たれたままのドアから砂鉄で器用にデイダラくんを押し返し吹き飛ばすサソリさん、彼のお気に入りの傀儡である三代目が律儀にドアを閉めて鍵もかけている。いや操ってるのはサソリさんなんですが。


「邪魔者は消えた」
「消した、の間違いですよね!」
「なまえ、俺の前で他の男に縋ろうなんざいい度胸じゃねえか、てめえが誰のものかってことをきちんと躾けてその身体に刻まねえと、なぁ?」


絶体絶命です、薬の効果こわい。でも、この薬の効果が切れた後も一体どうなることやら……。誰でもいいので助けてください!

20150618
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