小話 | ナノ

木の葉へと足を運んだ、多忙だろうとカンクロウに泣きつかれようと上役の睨みも全てはね除けてきた。

「あれ、我愛羅くん!」

それも全てなまえのため、愛おしくてたまらない初めての彼女との逢瀬のため、感じるもの何もかもが新しい、新鮮でこんなにも気分が上がることなど今までなかった。

今、幸せを噛み締めているわけなのだがひとつ問題がある。

俺は遠距離の恋愛が向いていないらしい、会えない日々が辛くてこんなにも苦しいとは……。早く嫁に迎え入れたい、それに木の葉に到着して早々、探さずともなまえと巡り会えた、これはもう運命と言っていいだろう。

眩しく甘くとろけるような笑顔で駆け寄ってくるなまえ、このまま砂へ連れて帰りたい、とんぼ返りで。

いっそ攫うか。

「我愛羅くんまた背が伸びた?今日はお兄さんとお姉さんはご一緒じゃないの?あれ、一人できたの?」

全ての質問に頷いて肯定の意、不思議そうに何用できたのか尋ね続けてくる、火影に用はない、木の葉の里の者にも用がない。

なまえ以外には。

「お前に、会いにきた」

思ったことを素直に伝えただけだというのになまえはこれでもかと言うほどに顔を赤らめる、もじもじとしながら俯いて小さく呟いた。

「う、うそ、我愛羅くん忙しいのに私のためだけに木の葉まで?」
「嘘ではない、特に用などないがなまえに会いたかった」
「ほんと?」
「お前のために来た」

くしゃりと表情を綻ばせるなまえ、ありきたりな例えだが、まるで花が咲いたかのようなその笑顔に眩暈がした。

「あの、我愛羅くん」
「なんだ」
「私もね、とっても会いたかった!」

胸が苦しくなるこの笑顔。

よし、決めた。

「なまえ」
「うん?」
「俺と共に来い」
「どこへ?」
「砂だ、すぐにでも出発しよう」
「へ?」
「これ以上離れ続け、焦がれ続けるのはもうたくさんだ、嫁に来い」
「が、がが我愛羅くん!?自分が言ってる意味わかってる?」
「本気だ」

わたわたと慌てだしたが、無言で手を差し出せば躊躇いがちに手を寄越した、軽く握るとなまえもやんわりと握り返してくれる。それだけでも無性に嬉しかった。

「も、もうちょっと心の準備と嫁入りする準備の時間が、ほしいなあ……なんて」
「そうか、わかった」
「ありが……」
「3分間待ってやる」
「我愛羅くん以外と短気!?」

ついには挙動不審になりだしたなまえを抱き上げ数えもしなかったが、3分経ったことにしておこう、木の葉には特に何の用もない、なまえを連れて帰るべく踵を返せば複数の人の気配。

わざとため息を零してあえて緩慢な動作で振り返る、予想はしていた。

「さすがにそれはヤバイってばよ」
「せめて一言くらいねえ、許可されないと思うけど」
「悪いがこればかりは権力を振り翳さねばなるまい、俺は十分過ぎるほど待った」

うずまきナルトとはたけカカシ、風影が誘拐はやばいってばよ、と言うが合意の上での行動だ、なまえは俺と共にくることを同意したのだ、何も問題はない。それに誘拐ではない、人聞きの悪いことを言うな、攫うかとは思ったが。

「いやね、我愛羅、物事には順序と言うものがあって一個ずつ課程を踏んでいくのがセオリーと言うか」
「なんだ、火影に許可を取れとでもいうのか」
「あ、綱手様なら嫁に行くのはいつでもいいぞって言ってたよ」
「綱手のばーちゃん軽っ!?」

後ろ盾も出来たことだ、俺たちを阻むものはもう何もない、そうと分かればなまえの移住準備だ。


今日、嫁に行きます
(増援を呼ぶ)
(?)
(なまえは砂に移住だ)

20130921
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