小話 | ナノ

どうも皆様おはようこんにちこんばんございます、フリーワーカーなまえさんでございます、えーっとフリーターじゃあございませんのでそこんとこお間違いなきようよろしくお願いしますキラリ!一人ポーズを付けてキメてみせてもまるで反応なし、ただ単に痛い人私、現在砂の里に滞在中でして大きなお仕事を頂いて遂行している真っ最中なのです。

「ハァイ我愛羅様、お寝んねのお時間がやって参りましたよレッツグッナーイ!」
「失せろ」
「ぎゃ!歪みなく容赦ない!けーれーどなまえさん負けなーい」
「……」

飛礫のような小さく鋭い砂の塊を放つ、四代目風影様のご子息我愛羅様、砂の攻撃をするする避けて眩しかろう私のてへぺろ笑顔を向けても我愛羅様は依然として無反応、心なしか僅かに苛立っていらっしゃる?きっと気のせい気にしない。

私はどこの里にも属していない、さすらいの旅人のようなしが無い必殺仕事人、無職ではない、決して無職ではない、大事なことなので繰り返しました。依頼がくれば例え火の中水の中、どこへでも出張致します、いわゆるよろず屋です。メインは催眠術や瞳術、操られる系の術に掛けられた人を助けてあげちゃうこと、お金?もちろん頂きます時と場合によりけり値段は変動しますが。

術を解除出来ちゃうわけだからそれなりの術も掛けられるわけで、独自で編み出した『睡遁、眠遁』なんてのもあったりします。掛ける方の依頼は滅多に受けないんですけども今回は特別です、これらは強制的に睡眠状態にさせるもの、ある種の仮死、冬眠状態とも言えないこともない、今回の仕事はこの我愛羅様を寝かしつけて差し上げること、睡眠不足は万病の元って言うじゃないですか。

一尾の守鶴によりうっかり眠ることが出来ないため、まず守鶴を強制的に眠らせ一時的に人柱力の封印に加え睡眠の、二重封印のような状態にさせる。さすれば我愛羅様は安心してお休みなさいませすることが出来るというのに!

風影様の命令であってもそれをそう簡単にさせてくれないのが我愛羅様!そこに痺れる憧れるゥ!……わけがない。

「もー我愛羅様寝ましょうよー」
「断る」
「寝ないとお身体に触りますよー」
「煩い、お前も信用ならない、軽口を叩いて俺を殺す機を狙っているんだろう」
「いやいやほんとに私はただのお休み係で」
「黙れ」

我愛羅様の反応もごくごく自然なもの、いきなり現れたよくわからない奴に「ハイちょっと寝てください」なんて言われて「ハイハイそうですか」なんておバカさんはいない、一応理由は言いましたけどね、風影様が我愛羅様を寝かしつけるようにって言ってましたって。全力で拒否とか我愛羅様ってば反抗期?

我愛羅様の繰り出す砂がものすごいスピードで私を潰そうと飛んでくる、元々アタッカータイプではなくサポートに適した術使いなものですからこんなふうに殺傷力の高い攻撃は出来ない、そもそも我愛羅様を傷付けたりなんか出来ないんですがね!逃げ足は自身あるけど!

「っぶねー!我愛羅の目がマジKILL1000%でなまえさんピーンチ」
「……」
「かーらーのー?」
「……」
「ふーむそろそろ真面目にやんないとですね」

ガチギレされて尾獣化されたら大変……いや待てよ?それはそれでやりやすいかもしれない、我愛羅様に封印されている守鶴を眠らせるには、一旦我愛羅様の中の守鶴と接触を試みなければ……でもそしたら我愛羅様に負担が掛かる、結果的にはプラマイゼロ。強制的に睡眠状態にさせている間、私は動けない。

守鶴を眠らせても我愛羅様はきっと全力で私を潰しに掛かるだろうから、もちろん我愛羅様も強制的に眠らせることになる。どっちみち疲れるのは同じなのだから、おふざけが過ぎてお仕事が失敗するのはすなわち『死』を意味する、向こうが全力ならばこちらも全力で迎え撃たなければ。

「次は、確実に殺す」
「次は、確実に眠らせます」

ざらざらと我愛羅様の元に集まっていく砂、身構えて術の発動に備える。私には絶対防御を崩す力もない、攻撃を防げる技もない。

「流砂瀑流!」

対抗するには術が発動して我愛羅様のチャクラが体内から減少していく瞬間が狙い目、逃げ足の速さはイコール回避速度にも繋がる、攻撃力も防御力もないのならばスタミナとスピードを活かして全てを避ければいい、相手のスタミナ切れを待つのだ。逃げ場を奪うように、連続して襲いくるまるで生きているかのような砂の波、僅かな隙間に体を捻り込み全てをギリギリでかわす。

捕まったら死ぬ。

息をつく暇もない猛攻、どれだけの砂波を避けただろうか、ほんの少し砂の勢いが弱まった。これだけ攻撃を続ければチャクラをかなり消費したはず、我愛羅様の様子を遠目に窺えば肩で息をしている。今こそ好機、アタックチャーンス!

一気に距離を詰め、我愛羅様の懐へ滑り込む、下がろうとされる前に右の掌を我愛羅様の下腹部に押し付けて守鶴のチャクラを探る。

「昏々睡々の術!」

見付けたそれに術を施す、猛烈な眠気を誘うチャクラを流せば薄れていく守鶴の気配、ぺたりと尻もちを付いた我愛羅様の額には熱を測るかのように左の掌を添える。

「さあ我愛羅様、お休みなさいませ」
「な……なん、だ……これ、は」
「死にゃあしません、眠るだけ」

とろりととろけるように瞼が緩く落ちてくる、必死に抵抗を試みたようだがただでさえ寝ていない我愛羅様に術を跳ね除けることなど到底無理、完全に寝入ったのを確認する、濃い隈が縁取られた目元は見ていて心が痛む。一体いつからしっかり寝ていないのだろう。

チャクラを常に流し込み続けなければならないから術の最中は起きてそばについていなければならない、我愛羅様を抱えて静かな場所に移動、空き家を見付けてしばらくそこに留まることにした。壁に背を預けて昏々と眠る我愛羅様を膝枕、柔い猫っ毛の頭を2、3撫でてみてふと思う。このクソ暑い土地に住んでるのに綺麗な顔だし色白だし羨ましいんですが。

「4代目風影も親としちゃあひどい人、自分の子すらまともに……なんて口出しできるほど私も人間できちゃいないんだけど」

さらさらふわふわな髪の毛の触り心地がよくてクセになりそう、次は起きてる時に触らせてくれないかしら、殺されちゃうかな。

守鶴のチャクラと我愛羅様のチャクラに触れた時、ほんの少しだけ二人の記憶の断片を垣間見た。幼い我愛羅様に仕向けられる風影様からの刺客、実の父親じゃないか、何故子を守ろうとしない?たった一人を守れなくて里が守れるかって話、でも実際問題難しいところよね、全ての者のためにといっても究極の選択を迫られることだってあるんだから。



我愛羅様を眠らせてから丸一日経った頃、最初に比べて随分顔色が良くなっている、やっぱり相当寝てなかったみたい、こんなにもはっきり顔色の変化がわかるほどだから。そろそろ起こしてみようかしら、いきなり暴れられても困るからまずは意識だけ。

「……」
「我愛羅様、起きたかったら起きてみてくださいな」
「……」

ゆるりと瞼が持ち上がる、虚ろな眼差しが次第に状況を理解し始め上から覗き込む私を認識しようとする、柔く短い猫っ毛を梳きながら名前を呼ぶが、我愛羅様の返事はない。何もする気がないのか、奇襲をかけるために油断させる作戦か。

「……腕が上がらない」
「意識だけ覚醒させました」
「だったら何故起きろと言った」
「起き"上がれ"とは言ってませんです」
「……」

ムス、とそんな表現がぴったりな表情の我愛羅様、髪をゆるゆると梳く手を止めて様子を見ていたが、特に何かを仕掛けてやろうとするそぶりは微塵も見せず、小さくため息をつかれた。更に小さく何かを呟いてうっかり聞き逃してしまい、聞き返せばぎろりと睨まれてしまった。あらやだ怖い。

「……を……な」
「はい?」
「……」

こんなに近いのに聞き取れない、今度は耳を近付けてもう一度聞き返してみたらおもいっきり髪を引っ掴まれて一瞬頭皮が破けるかと思いました、なあんだ我愛羅様ってばちょっとは動けるんじゃないですか、それにしても痛い。

「手を止めるな!」
「はあ?」
「何度も、言わせるな殺す」

言われた言葉に素っ頓狂な返事、気に食わないらしい我愛羅様はどうやらもっと頭をなでなでして欲しいようだったのです、何もう可愛いところあるじゃないですかあ!殺すとか最後に言われても、ねえ?

ぎゅーっとしとこ!

20130428
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