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我愛羅と夢主へのお題:いつの間にか、きみのためになっていたんだ/「いかないで。」/キャンディおひとつどうぞ http://shindanmaker.com/12230*

里を守りたい、民を守りたい、俺は救われた、だから今度は誰かを救いたい、風影になるまで一心不乱に修行を積み経験を重ねた、テマリやカンクロウの手助けもあり、本当に感謝している。

何度も壁にぶち当たった、苦しいことばかりだったが必ず乗り越えることが出来た、それはいつもそばにいて、どんな俺でも愛してくれるなまえがいたからだ。

「いってらっしゃい」
「がんばってね」
「おかえり」

朝が早くても帰りが遅くても、必ず声を掛けてくれた、たったそれだけのことがどれだけ嬉しかったことか、より良い里造りもなまえがいてくれるから、どんな時でも味方でいてくれるから無茶も出来た。

里のため、民のため、個人のため。

巡り巡ってそれは

いつの間にか、
きみのためになっていたんだ



我愛羅が連れ去られた晩の任務は乗り気がしなくて、やっぱり何か理由を付けて意地でも我愛羅と一緒にいれば良かったんだ。

守鶴を抜かれてしまったと聞いて眩暈がした、任務を放って里へとんぼ返り、里はめちゃくちゃ、木の葉のうずまきナルト達が暁と交戦中だと通達がきて、すぐに応援へと向かった。もっと速く、一刻も早く我愛羅のところへ行かなければ、尾獣を抜かれた人柱力は死ぬ、そう聞いている。そんなの絶対にいやだ、せっかく風影になったのに、我愛羅はいい方向に変われたのに、もう終わりだなんていやだ。

さわさわと風になびく草花が広がる草原にたくさんの人、その中心にはテマリ達と、木の葉のうずまきナルト達と我愛羅、横たえられてぴくりともしない我愛羅にゾッとした。死んだの……?我愛羅、死んじゃった、の?

「大丈夫だ、絶対に死なせねえ!」

テマリに腕を引かれてふらふらと我愛羅の傍に膝をつく、横ではチヨバアが自分の命を我愛羅に!そんな、チヨバアも死んじゃうなんて!

「構いやせん、気にするな」

やだ、いやだ!我愛羅がいなくなるのもいやだけどチヨバアがいなくなるのもやだよ、一人で取り乱してわあわあ泣いた、ずっと一緒にいたい、みんな揃って笑っていたいよ。我愛羅が目を覚ましたことは死ぬほど嬉しい、でも代わりにチヨバアが目を閉じてしまったことが死ぬほど悲しかった。

「いかないで。」


私には夢がある、ずっとずっとずーっと憧れてきた我愛羅くんと他愛ないおしゃべりして仲良くなること、昔から人柱力だなんだといろいろ言われてきた彼だが私はずっと信じてた、いつかきっとみんなから慕われる、我愛羅くんは絶対すごい人になるって。そしたら風影になっちゃって、我愛羅くんは随分と変わった、アカデミーの頃から見てきたからね!いやいやストーカーじゃないし!

アカデミー時代に一度だけ話し掛けたことがあるんだけど、そりゃあもうひどいもんだった、自分を少しでも知って欲しくて印象付けようと、模擬演習があったからどもりながらもがんばってねって言ったのよ、そしたら我愛羅くんは「うるさい殺すぞ」ですってー!ハートは粉砕骨折ですけれどもなまえさんめげなかった!このくらい割と予想してたし恋する乙女は何物にも負けませんから。いや別にドMじゃないし!

そうそう、憧れていたのと同時に恋してたわけで、当時事情を知っていた親友には命知らずの阿呆だと言われ続けて、それでもずーっと想い続けて、くっそつらい修行とか死に物狂いでひたすらがむしゃらにやってきたんですよ、どんどん先に進んで遥か遠い存在になっていく我愛羅くんに少しでも近付きたくて。気付けば我愛羅くんは風影になってて雲の上のお方、それでもやっぱり諦めきれなくて、ごみくずみたいな任務も誰もが嫌がる任務もできることは片っ端からやってきた、その甲斐あってついこの間、風影直轄の精鋭部隊への推薦状をもらって、小躍り。マジで踊った。

我愛羅くんの近くで任務ができる、半径数メートル以内にいられるだけで天にも昇る気分だ、本当に嬉しかったんだけど、ひとつ気になることがある、推薦状を書いたのは誰?私には後ろ盾とかコネなんかない、つまり推薦してくれる人なんか身近にいない。よくわからない推薦状の出どころに首を傾げながら、早速招集があったので風影の塔へ。

「よく来た」
「え、と……」
「どうした」
「いやあの招集って聞いたんですけど……」
「そうだ」
「私以外の人は」
「お前しか呼んでいない」
「ああ、はあ……(じゃあこれって招集って言わなくね?)」

久しぶりに近くで見た我愛羅くんは随分と大人になってすごく背が伸びて、更にかっこ良くなっていた、昔と同じように我愛羅くんなんて気安く呼べそうもないや、てっきり早々に任務かと思ったら私が精鋭部隊に入る際の説明だったりそういうのだった。特殊な任務にもついてもらうけど、時々執務系も手伝うことになるんだって!招集じゃねーよ、普通に呼び出しだよ事務連絡な、これ。それはともかくとして、ちょっとは近付けたみたいで頑張った甲斐があったなあ。涙出そうだわ、よし、この際ついでに推薦状についても聞くことにした、だって気になるし。

「あの」
「なんだ」
「推薦状なんですが、一体誰が私なんかを推薦したんです?」
「おれだ」
「……は?」
「おれが推薦した」

言われてることの意味がまるで理解できない、我愛羅くんが私なんかを?推薦?なんでよ、別になんもしてないし、昔交わしたあの凄まじい会話以来しゃべったことないのに。なにこれ奇跡?手違いだったとか言われたら泣くわー超泣けるわー。

「手違いではない」
「じゃあ何故です?」
「……いつも全力だったからだ」
「はい?」

何だろう、漠然だし歯切れ悪いな。我愛羅くんはもっと別のことを言いたげなんだけど、もじもじっていうの?若干言い淀んでる。

「……その、覚えていないか?」
「何をです?」
「おれとお前は同期だろう」
「ええ、まあ」
「だから、つまり……昔と同じように接してくれないか」
「……はい?」
「あの時おれはなまえに殺すぞと言った、ずっと謝りたかった、動揺していたんだ、まっすぐきらきらした瞳でがんばれと言われて、わけがわからなかった」

絶句。

我愛羅くん覚えてたんだ。

「すまない、だがこれは罪滅ぼしというわけではなく、なまえが上げてきた功績を加味しての推薦だ」
「ずっと、覚えていてくださったんですか?」
「敬語もいらない、忘れたことなど一度もない」

やばい何これ小躍りしそう、いや踊ったらきっとドン引きされるだろうから踊らないけど。すごく嬉しい。

「少しでも我愛羅くんの記憶に残れてたことも嬉しい、頑張ってきたことが認められるのも!」
「当然のことだ」
「我愛羅くん、ありがとう」
「礼を言わなければならないのは俺の方だ」

随分と丸く、柔らかくなった我愛羅くんの雰囲気がじんわりあったかい。

「こんな時におかしいかもしれないが……」
「なあに?」
「手を出してくれないか」

我愛羅くんはおもむろにポケットへ手を突っ込むと私に手を出せと口にした、なんだろう。

「これを」
「ん?」

言われた通りに手を出せば、我愛羅くんの手から渡されたのはカラフルな飴玉たちがたくさん。

「テマリにもらった、よかったら食べて欲しい」
「あ、ありがと」
「昔、任務中にもらった覚えがある、疲れている時に食べたら元気が出た、ちっぽけなもので悪いが俺なりの歓迎として受け取ってくれ」

はにかむような表情を見せた我愛羅くん、まさか風影様のポケットに飴玉が入ってるなんて意外だ、感激した!

「我愛羅くん!」
「ん?」
「ありが」

飛びつきそうになる衝動を押さえ込んで一瞬飴玉たちに視線を落としたら、思わず言葉が途切れてしまった、飴玉たちの包みに書いてあったもの、目を疑った。

「砂肝……味?」
「タン塩味もあるぞ」
「え……」
「やはり一番は砂肝味だ」

飴にしてはいけない味だと思います。

キャンディおひとつどうぞ

20131103
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