小話 | ナノ

ガイ先生は熱血である、カカシ先生はスーパードライクールである、足して二で割れば丁度いい感じ。そんなことをぼんやり考えながら目の前の熱いのと冷たいのを一瞥して自分の爪先を見た。早く終わんないかなあ。

「うーん聞いてるのかなあ」
「なまえ!どぉぉぉして俺の熱意が伝わらないんだ!」

……お説教、まだかな。
先生達の言葉はいっこも聞いてないし頭に入らない、ガイ先生ほんと声でかくてうるさいなあ、ゲジ眉ださいなあ。リーと一緒に居ないだけましだけどね。

ごちゃごちゃうるさい先生達にハイハイすみません反省しましたハイハイ、と適当な相槌を打ってその場しのぎ、解放してもらったのは呼び出されてから二時間後のこと。随分拘束されてたんだなあ、あー疲れたなんて言っちゃう私に反省の気持ちなんか微塵もない。

何しろ今回呼び出されたのは先輩達のせいだ、私は悪くないし濡れ衣を着せられたのだ。あの芸術芸術うるさいあいつら早くさっさと早急にくたばればいいと思う。美術部の備品をちょいちょい拝借して好き勝手やってるらしいデイダラ先輩とサソリ先輩、彼らはたまたま美術準備室の掃除当番だった私をそそのかした(掃除代わってやるっていうから!)つい鍵を渡してしまったわけである。

備品がなくなって私が疑われるのは必然、まさか備品目的だなんて知らなかったし、結局先輩達が備品を拝借したのは先生達もわかってみたいだけど元凶はお前だぞって言われてしまった。くっそ。

悔しいので先輩達の下駄箱に落ち葉をぎっしり詰めておいた、何とも言いようのない、形容し難い腹立たしさを覚えればいいと思う。いつかくたばれ。

外はだいぶ暗くなってきていて校舎の中も薄暗い、下校時刻ギリギリ。帰宅部だし、学校に残ることなんかほとんどないし早く教室に荷物を取りに行かないと日直のやつに教室の鍵当番を否応なく押し付けられるのは御免被る。うちの学校は教室ひとつひとつに施錠しなければならなくて、その日の日直が朝早く来て開けたり、帰りも最後に鍵をする。

まあ大体帰りは教室に最後までいた奴に鍵を押し付けるってのが暗黙の了解って言うか恒例と言うか常。今日の日直誰だったかなーナルトやキバだったら間違いなく押し付けられてるだろうし、リーかヒナタならきっと待っててくれてる。

出来ればヒナタがいいんだけどな、リーだと相手するの面倒だし。そう思いながら電気が消されて暗くなってる教室の扉に手を掛ける。あ、やっぱ誰も居ないっぽい、嫌だなあ。

「今日の日直ないわー先に帰るとか薄情」

ぶつぶつ文句を言いながら電気をつける、教室には誰も居ないと信じ込んでいたばかりに私は心臓が止まるかと思った、教室にはまだ人が残ってた。

「……」
「が、がが、ががが」

微動だにせずエメラルドグリーンの瞳がこちらを見据えている、微動だにしない、軽くホラーだ。あれは確か我愛羅君ではなかっただろうか、事務的なことしか話をしたことがなくて彼自身もそれほど口数が多くない、席も離れているしあまり接点がないクラスメイト。そうか今日の日直は我愛羅君だったのか、まずい失言。

「ご、ごめんねー!暗くて気付かなかったよー!いやあガイ先生とカカシ先生は説教長くてさあ!」
「……」
「ほんとごめんねー!我愛羅君もさっさと帰りたかったよねーほんとごめーん!」

まだ無言。我愛羅君は私を見据えたまま微動だにせず口も開かない、怖い。怒ってんのかな、慌てて机の中のものを鞄に突っ込む、それを見て我愛羅君も椅子からすっと立ち上がり鞄を肩に掛けた。

「申し訳ないね我愛羅君!お詫びに私が鍵掛けて職員室に置いてくるから…」
「帰ろう」
「了解!どうぞどうぞお先にお帰りくださ」
「一緒に、帰ろう」
「うん!そうだね!一緒に帰……うん?」
「鍵、職員室に置いてくるから」
「え」
「すぐ、戻る」

教室を出ると我愛羅君が急に口を開いた、日誌と鍵を持って我愛羅君は走って職員室の方へ消える。私は呆然とその場に突っ立ったまま、さっきの会話を整理してるんだけど要するまでもなく答えは明白だ、突然の一緒に帰ろう発言。一体何が起きた。

接点がないに等しいにも関わらず、我愛羅君はまだ私が残っていることを知っていて待っててくれて一緒に帰ろうって言って鍵を持ってってくれて、今現在職員室の方から無表情で走ってこっちに向かって来てる我愛羅君ちょっと怖い、無表情怖い、足はっや!

「待たせた」
「がーら君足速いんだね……」

息ひとつ乱れてないところが更に怖いよね!アンドロイドみたい。

「帰ろう」
「あ、うん」

学校を出て二人で並んで歩いてたんだけど、接点がないせいで話の弾まなさといったらない。今日の授業つまんなかったよねー、ああそうだな。会話終了。

えええ、みたいな。

「なまえはよく寝ているだろう」
「え、うん」
「この間、頬杖付いてて落ちたのを見た」
「げ、見てたの!?恥ずかし!」

そんでまた無言、ぶつ切りになる会話だし気まずいんだけど嫌な気まずさじゃなかった、なんて表現したらいいのかな。

「私こっちだ」
「俺はこっちだ」
「そっか、じゃあ、また明日」
「ああ」

ばいばい、と手を振って

「なまえ」

そこで呼び止められた。

「なにー?」
「よかったら、また明日も一緒に、帰ろう」

我愛羅君は意外と可愛い。







20121217
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