ダウナーダウナー | ナノ

昨日大谷くんにプリント渡したよ、と恐る恐る報告したら高虎と三成にバッシングではなくて鉄拳制裁を喰らった。プランA(プリント渡してはいさよなら作戦)はNGだったらしい。じゃあどうすればよかったんだよ!逆ギレしていいかな!?


「いいい痛いー!三成がグーで殴った!ひどい!」
「何故すぐに帰ったのだ!」
「そうだ馬鹿野郎、少し邪魔してその日1日何があったか聞かれなくてもしゃべってくるべきだろうが!」
「何そのムチャぶり!顔合わせて間もないってのにそんな無遠慮なことできるわけないでしょ!」
「無遠慮の代名詞であるなまえが何を今更」
「三成に言われたくないんですけど」
「まあいい、吉継にはなまえの番号とアドレスとラインのIDを送っておいた、お前にも吉継の連絡先を送っといてやるから次はちゃんとしろよ?」
「ばっ!な、なんで勝手に送るの高虎ァアア!」


ちゃんとしろって何!意味がわからない、プライバシーのかけらすら私に持つことは許されないとでも言うのか。昨日の今日だ、気まずいのなんのって。嫌味を言い放って帰ってきたなんて言った時にはフルボッコが確定する。肉体的にも精神的にも。これは絶対に内緒だ、墓まで持ってく!私だけの秘密だ。

高虎と三成に散々詰られ朝からげんなり、もうおうちに帰りたい……。ホームルームまではあと15分もある、私の席にたむろする高虎と三成を睨んでも全く相手にされず、結局は追い返すのを諦めて深々とため息を零しながら制服のポケットに手を突っ込んでスマフォを出した。
ホームボタンを押して画面に指を滑らせてロックを解除、メールアプリのアイコンに通知バッヂが付いていて、高虎が送ってきたものだろうとアプリを開く。

通知バッヂの数字は「2」だった、高虎はわざわざメールアドレスと電話番号、ラインのIDを分けて送ったのかと思っていたら、高虎からのメールは一通だけでもう一通は知らないアドレスが表示されている。

誰かがアドレスを変えたのかな、謎のアドレスは後で開くとして、先に高虎から送られた大谷くんのアドレスと電話番号を電話帳に登録をした。お、お、た、に、くん……変換っと。


「ほあ!?」


登録後、再びメールアプリを開けば見知らぬアドレスがいなくなっている。その代わりにさっき登録したばかりの「大谷くん」という表示がそこにあるではないか。びっくりして思わず変な声を上げれば高虎と三成が無遠慮に私のスマフォを覗き込み「吉継じゃないか!」「早くメールを開くのだよ!」引ったくられはしなかったけれど、三成が横から画面をタップしやがった。

ちょっとプライバシーの侵害でしょこれ!


「なまえ!今日も吉継のところへ行け!もちろん一人でだ!」
「はあ!?用もないのにやだよ!」
「" 昨日のプリント、感謝する "か……悪くはないな、今すぐ返信しろ」


高虎の無茶振り反論していると、三成が冷静に何やら分析思案中。ちょっと待って今?今じゃないとダメなの?なう?


「吉継はお前の返事を待っている」
「嘘でしょ?なんでわかるの?三成の勝手な妄想じゃなくて?」
「あいつはメールを打ち切りたい時に句点を付ける、逆に返事がほしい時には付けぬのだよ」
「句点って……ああ、文の終わりのマルね」


三成はそう言うけど単なる付け忘れってこともあり得る、それに返事を送ったとしても「どういたしまして!」の後はどうすればいいの。


「確か俺がストックしておいた饅頭の期限がそろそろくる頃だ、吉継は俺たちがいない時はあまり食わん、俺が行けない代わりに行くと伝えればいいだろう」
「三成が行けばいいでしょ!」
「俺も忙しい、よって一番暇を持て余しているなまえが行け」
「ちょっと暇を持て余してるって勝手に決めないでよ!私にだって用事の一つや二つ……」
「ほう?」


で、用事とはなんなのだよ。三成が見下すようにして痛いところを突いてくる、言葉に詰まった私といえば放課後の予定は皆無の帰宅部である。「決まりだな」高虎がそう締めくくって教室の時計をチラ見した。


「あと5分でホームルームだ、なまえちょっとスマフォ貸せ」
「え、ちょっと高虎!」


今度こそ手からするんとスマフォを奪われ咄嗟のことに取り返そうにもそれを三成が阻みやがる、二人がかりなんて卑怯だ!


「やれ高虎」
「言われなくてもやるさ」
「ちょっとォオオ!」


三成が私を押しのけ高虎が私のスマフォを高く掲げながら何やら打ち込んでいる、ちらちら見え隠れする画面には私の口調っぽく文字が浮かぶ「どういたしまして、今日はプリントついでに高虎に期限の近いお饅頭の回収を頼まれたんだけど、行ってもいいかな?」高虎!さすがにハートはやめてよ!ハートの意味がわからない、ぷくぷく動くピンクのハートが所在なさげに揺れている。

ついでに言うと三成の方もさっきからずっと揺れている、揺れているって言うよりか震えているね!なに笑ってんの!?ふざけるのも大概にしようね、って言ったそばから噴き出すんじゃない高虎ァア!


「やだああ送信されたああ!」
「やかましいぞなまえ」
「誰のせいだよ!高虎だよ!」
「後は返事待ちだが……っく」
「腹立つ!笑いながらしゃべるのやめてほしいな三成!」


間の抜けたチャイムの音に高虎からスマフォを返され、三成はさっさと教室へと戻ってしまった。

20160831
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