ダウナーダウナー | ナノ

放課後の衝撃告白からグロッキーな私は二人に引きずられるようにして通学路を歩いている。


「ねえ、やっぱやだよー私絶対いらないよー」
「煩い黙れさっさと歩け」
「……高虎ぁ」
「お前はいつもそうやって高虎高虎と、少しは……」
「俺も頼れって言いたいのか、三成」
「っ、知らん!」


生ツンデレって意外とめんどくさい、相手するのがね。さっき通り過ぎた十字路は右に曲がれば私の自宅がある、でもそこを通り過ぎてまっすぐ行っている、大谷くんとやらの家へと向かっているのは言われなくてもわかる。
絶対やめた方がいい、そう豪語しても二人は私を開放しようとはしなかった。っていうか大谷くんの家って私の家と案外近かったみたい。

いきなり押し掛けるのは失礼じゃないかなーってぼやいてみても、連絡は入れてあると返され、行く理由が……と呟いても、今日のホームルームで年間行事予定表やらいろんなプリント類をもらったから、それを届けに行くという名目ができた。

それにお前は席が吉継の前だろう。

そうやってぐうの音も出ないことを言われたら、黙るしかないでしょう。席が近いってだけなのにこの説得力やばい、意味がわからない。

そういえばこっち方面ってかなりいいお家とか値が張る高層マンション群がなかったっけ、あんまり来ない方向だからよくわかんないけど。
閑静な高級住宅街、そういうのがしっくりくる場所だ。


「なまえ」
「なに?」


ふと前を向いたままの高虎に呼ばれた。


「お前時々無遠慮なとこがあるから先に言っておく」
「うん?」
「吉継は両親がいないからそこんとこ変に突っ込むなよ、いいな」
「うん、わかった」


それは三成と同じだ、孤児院で育った三成は豊臣さん夫婦の養子という位置付け、清正と正則もそう。
だからあの三人は義理の兄弟みたいなものって認識だ、一応大谷くんも豊臣さん夫婦に気に掛けてもらっているらしいけど、今は一人暮らしでいるみたい。
理由も聞くなっていうことね、わかった。

到着した先に見えたのは高級高層マンション、足を止めた二人に無言で視線を送ると、聞きたいことを察してくれたのか、二人同時に頷いた。ここだって。
広過ぎるエントランスに設置してあるオートロックのロビーインターフォンに、高虎が慣れた様子で部屋番号を押す。「……はい」出すのが億劫そうな少し掠れた声で返事があった。


「吉継、今日は始業式だぞ、プリントを届けに来た」
「……いま、開ける」


マンション内へ続く自動ドアが開いた、エレベーターに乗り込んで三成が押した階数は最上階。ただでさえ家賃が高そうなのに最上階って言ったらもっと高いだろうなあ、更にこれで角部屋なんて言ったらもうなんも言えない。
一体どんなやつなんだ大谷くん。


「着いたぞ」
「……まさかの角部屋」


まるで我が家に帰って来たかのように堂々とドアを開けて上がり込む二人、本当に入っていいのだろうか、やっぱり回れ右して帰ろうか。開けられたドアの前でまごついていると、三成が乱暴に手を付かんで中へと引き入れる。

オ、オジャマシマース、裏声気味にもごもご呟いた。引っ張る三成を睨んでも、やつは前を向いているから無意味な抵抗だった。

とりあえずお邪魔した感想言っていいかな、玄関広い!私達が三人ならんで靴脱げる広さって何これやばい。向こうに見えるリビングなんてもう怖いくらいやばい、ほんとに高校生の自宅?やばいヤの付くお仕事絡みの家系じゃないよね、ねえ。
さっきから私やばいばっかり言ってるよ。

広いリビングの向こうにも部屋は続いていて、奥に大谷くんの部屋があるみたい、ちょっと興味本位できょろきょろ見回してみたら生活感が薄い、カウンター型の多機能キッチンも真新しい。
あんまり使われてない感じがする。


「おい吉継、そんなところにいないで早く出てこい」


高虎が奥に向かって叫んだ、つられてその方角に視線を向ければさっきまで閉じられていた奥の部屋の扉が少し開いていて、覗くようにこっちを見ている人がいた。
向こう側は少し暗いから軽くホラーだ、あれが大谷くんなんだろう。
私がいることによって警戒しているのか、大谷くんはそこから動こうとはせず、じっとドアの影に隠れたままだ。


「来いと言っているのだよ」


今度は三成が動き出した、大股で大谷くんへと近付くとドアに隠れる彼を引きずるようにして連れ出してきた。広いリビングに突っ立っているのが絵的になんとも言えず間抜けだと思う。
のそのそと一人掛け用のソファに沈んだ大谷くん、それを見て高虎が動き出す。


「三成、なまえも適当に座ってろ、吉継、キッチン借りるぞ」


いつものことなのか、高虎は返事を待たずにキッチンへと入った。勝手知ったる様子で冷蔵庫と収納スペースを漁る、急須と湯のみを人数分出していた。高虎って意外と女子力高くてびっくりする。
大谷くんは慣れているのか何も言わないでずっと俯き加減に自分の爪先を見つめていた。

20150620
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