ダウナーダウナー | ナノ


昔から騒がしい場所は苦手だった。
喧騒を避けるように隅でおとなしく息を潜めていても、俗世はそれを許さない。

「お前、調子のってんじゃねーよ、クール気取りっていうの?マジねーわ」

とんだ言い掛かりである。流れは俺にない、たまたま同じクラスになったガキ大将ポジションのやつに目を付けられ、学校はひどく寒く苦しい場所というイメージが定着した。
そんなふうになってしまったのも、些細な理由だ。ガキ大将が好意を寄せていた別のクラスの女子が、俺の髪が綺麗だと褒めたから、そんなことで俺は言い掛かりを付けられたのかと思うと、褒めてくれた女子にまで憤りを感じざるを得ない。
ガキ大将に歯向かえるやつなど到底いるはずもなく、元々少なかった多少話せる程度のクラスメイトも次第に俺の元から離れていった。

初めはいじる程度だったものが次第に嫌がらせとなって終いにはいじめとなり、気が付けば俺は学校へ行かなくなっていた。

流れというものは恐ろしい、大きな波には誰も逆らえない。飲み込まれたが最後、足掻いても足掻いてもどうにもならないのだ。助けも情もないそんな世界に辟易としながら息のつまる日々を黙々と過ごしていた。

いつまで経っても流れは俺の方にこなかった、小学校時代から一緒の高虎ともクラスが同じになることはなく、中学校では三成とも遠く離れていた。空いた時間を俺のために割いてくれる二人には本当に感謝している、だが同時に申し訳なさが溢れて止まらない。

ギリギリの単位で中学を卒業し、ギリギリのラインで二人と同じ高校に入学した。だがやはり俺にはむりだった、昔の嫌なやつらがいないといえど人の多い場所はどうしても苦しい。死にたくなる。
あいにく引きこもった生活だとしても不自由は何一つとしてない、これといった趣味もない、インターネットが普及したこの時代だ、必要なものは全て揃う。金銭面の問題もそこでどうにでもすることができるのだから、俺は息を潜めて暗い部屋でじっとしているだけでもなんら問題ない。

誰にも必要とされない、いてもいなくてもどうでもいい俺などいつ死んだって構わない、時がくればいずれ人は死ぬ、個人差はあるだろうが単に遅いか早いかの問題だ。

俺の居場所などどこにもない、そもそも俺という存在などこの世に必要なかったのかもしれない。いや、かもしれないのではなく、必要ないのだ。

「お前、ユーレイみたいで気持ち悪い」
「その鬱陶しい髪、切ってやろっか?俺美容師志望なんだよねーあはは!」
「目障りなやつだな、その澄まし顔がムカつく」

フラッシュバックする声が、たくさんの人の冷たい視線が俺を壊そうとする。

いやだ、やめろ、やめてくれ!

自分の悲鳴に飛び起きて、でたらめに手足をばたつかせていた。何でもいいから縋りつけるものが欲しかった、安堵できるものを感じたかった、飛び起きて目の前にあったものに手が触れ、それに飛びついて久しぶりに涙が出た。

それは何故か温かかったのだ。

20161017
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