おじさま×甘党×ドライヴ | ナノ

大学の講義を終えて、お昼休み。いつものメンバーでランチタイムを満喫しているさなか、友人の一人がそういえば、と切り出した。お弁当をつつきながら聞いていれば今朝のことについてだった、私のことか。

朝、少し寝坊をしてしまって講義に遅れそうだったから車で送ってもらった私。ありがとう行ってきます、帰りも迎えに来ますぞ、えっいいの?ありがとう!そんな会話を車内と車外のウィンドウ越しにやっていた。

その様子をたまたま見ていたんだろう、今現在質問責めに遭っている真っ最中だ。


「今朝見たんだけどなまえ!」
「え、何、うん?」
「車で送ってもらってたでしょ?しかも真っ赤な外車、あんた前に実家は地方だって言ってたよね?じゃあ今朝送ってくれてた人は誰?親じゃないでしょ?」
「えー何なまえって彼氏いたの?なんで言ってくんないのよ水臭い!」
「いやいや言うもなにも聞かれたことないし……っていうか彼氏じゃないし」


ふむ、説明が面倒だ。

何かと聞かれれば関係性は家族に近い、でも親でもなければ兄弟でもなく彼氏でもない。ただの親戚のおじだと何度説明して言っても聞かない友人ら、終いには援交か!きゃー犯罪!なんて茶化し始める始末、でも否定はしなかった。弁明も特には。

年の割に達観してるというか、冷たい印象があると言われがちだけど、別に達観してるつもりもクールを気取ってるわけでもない。ただ単に面倒なのだ、本当に。





「おやおや、そんなふうに見られておりましたか」
「びっくりだよねー、ほら陳宮おじさまって年齢よりも随分若く見えるし、役得じゃない?」
「確かに、確かに老けて見られるよりはマシですが」


朝のやり取り通り、本日の講義を全て終えて、本当に迎えに来てくれた陳宮おじさまの車の中で、今日の出来事を話して聞かせた。可愛い見た目の真っ赤な外車は、その外見の可愛らしさとは裏腹に、想像を遥かに超える走行性能を秘めている。

コンパクトで大人しそうに見えて思いのほか力強いエンジンスタート、実際に乗ってみるとよくわかる。そういうところが陳宮おじさまと似てると思う。飄々としているように見えるけど、実際はかなりの野心家、人が車を選ぶのと同時に、車も人を選んでいる気がするんだ。ペットが主人に似るように車もオーナーに似る、その逆もまた然り。


「周囲からそんな風に見えているのならば、なまえの伴侶、恋仲として名乗りを上げてもよろしいですかな?」
「またまた、陳宮おじさま冗談が過ぎるって」
「心外ですなあ、私は本気で、本気で行っておりますぞ」
「はいはい」
「むむむ、まるで信じていないようですなあ、家に着いたら覚えていろ、ですぞ!」
「はいはい」


ミラノに思いを馳せ
トリノから愛を込めて


20140711
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テーマ「人外ファンタジー」
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