たまの休日、冬の寒空が覗く窓の向こうは今にも遠くの山々に雪化粧を施しそうな空模様。
ほっとする暖かなリビングで、于禁さんは小難しい本を熟読してて(洋書なんだけど英語じゃない!)私はそんな于禁さんを見つめてみたり、隣に座ってちょっぴり寄り掛かってみたり。
于禁さん睫毛長いなあ、彫りは深いけど切れ長の一重まぶた、鼻筋が通ってて……。
「……何をじろじろ見ている」
「あ、ごめんなさい、気が散ります?」
「いや」
ページをめくるペースが少し落ちたかな、と思ってたら私が不躾にじろじろ見てたせいで気が散っちゃってたみたい、でも構って欲しいわけじゃなくて、こうして素敵な于禁さんを眺めてるだけでものすごく満ち足りてるから、そういう意味では私はわりと忙しい、ただ単に本を読んでるだけでも于禁さんて絵になるなあ。
「ですから私のことは気にせず本に集中しててくださいね!」
「……」
横目でちらりと私を見遣り、華奢なシルバーフレームの眼鏡の位置をさり気なく修正、こう、手が眼鏡全体を覆うようにスッとやるの。その仕草に魅入って顔の筋肉がだらしなく緩むのが自分でもよくわかった、于禁さんほんと素敵だなあ。
「……なまえ」
「はい?あれ、もう読むのやめちゃうんですか?」
「気が散るとは言わぬ、だがこうも真横で百面相をされてはこちらが構いたくなる」
本を閉じてやれやれとでも言いたげだ、苦笑混じりに于禁さんは私と向き合うように座り返した、本と眼鏡をサイドテーブルに置き、目頭を軽く指で押さえる姿もまた胸にぐっとくるものがある、むしろ于禁さんの動作ひとつひとつ全部に胸キュン要素が満載だ。私いつかきっとキュン死にすると思う。
午後のこの時間、ちょっとしたティータイムでもしようかな、于禁さんが一区切り読書を中断したついでに。
何を飲もうかな、于禁さんは何を飲むんだろ、紅茶?コーヒー?緑茶かな。
「于禁さん、何か飲みます?」
「もらおう」
私、紅茶にしよっと。
何飲みます?于禁さんに尋ねたら紅茶と返された、于禁さんが紅茶って言うとものすごくおしゃれ感がある気がする、ティーカップを傾ける姿を写真に収めたいくらいだ。へらへらとだらしない表情のまま、キッチンでティーカップを取り出してソーサーを探す。
「すまんが」
「わ、びっくり!」
いつのまにか背後に立っていた于禁さんに、心臓が口から飛び出るかと思った、なんだろう、私の手元を覗き込んで視線を彷徨わせてる、何かお探しですか?
「砂糖とミルクを」
「え?」
「ミルクティにして欲しいのだが」
「え?」
「できることならば、甘めに」
「え?」
耳がおかしくなったのかな、于禁さんの口からミルクティという単語が飛び出した、てっきりストレートだとばかり思い込んでた矢先のことだ。
「あ、ああ、疲れてる時って甘いもの欲しくなりますもんねー于禁さんて甘いもの苦手そうなイメージあったからびっくりし……」
「いや、紅茶もコーヒーも甘くなければ……その、飲めん」
「!?」
ま、真顔でさらっと爆弾投下された!
于禁さんコーヒーも紅茶も甘くしないとダメなんだって!私今度こそ萌え死ぬ!これ確実に死ねる!
「于禁さん」
「なんだ」
「あの、ミルクティのおともにケーキはいかがです?」
「あるのか!」
「え、ええ、まあ」
「もらおう」
表情が一気に明るくなる瞬間を見た、しっかりと焼き付けるように心のビデオカメラに収めました、ケーキという単語に若干上半身が前のめりになったもの。
「于禁さんて甘いもの好きなんですね」
「む、まあ、その……嫌いではない」
つまり大好きなんですね、どうしようこの甘党なおじさまめちゃくちゃ可愛い。
冬季限定ミルクティ
20140205
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