おじさま×甘党×ドライヴ | ナノ

毎日ってわけじゃないんだけど、私は大学へ行くのに居候させてもらっている陳宮おじさまにお弁当を作る、電気代だとかの生活費をチャラにしてくれる代わりに家事の一切を任されてその延長線。

あのほっそい身体のどこに食べたものが行くのかと不思議に思うほど陳宮おじさまはよく食べる、お弁当も私の二倍以上の量だ、好き嫌いは特にないみたいだし、その辺が作る側としてはありがたい。

それでこの間、いつも通りお弁当を作ってあげて陳宮おじさまが出掛けるのを見送ってから私も大学に行って、一通りの授業をこなして帰宅、ちょこっと片付けものをした後、夕飯どうしようかなあ、なんて冷蔵庫の中身と睨めっこ。

久しぶりにオムライスにしようかと思ったけど、お弁当に卵を使ったのを思い出してやめた。


「なまえ、なまえはおりますかな!」
「あ、陳宮おじさまおかえり」


ただいまもそこそこに、帰宅するなりキッチンへものすごい剣幕で猛進してきた陳宮おじさま、なになにどうしたの、また上司の人が暴走でもしたのかな?(時々マシンガンみたいに愚痴るんだよね)

ぷんすか、そんなふうに形容できそうな可愛い怒り方、これはどうやら仕事絡みじゃなさそうだ、首を傾げれば陳宮おじさまは鞄からお弁当箱を取り出して私の眼前に掲げた。


「私は怒って、非常に憤慨しておりますぞ!」
「お弁当……何か生だった?陳宮おじさま嫌いなものあったっけ?」
「否!」


何か変なもの入れたっけ?こんなに怒る要素にまるで見当も付かない、相変わらず首を傾げ続ければ陳宮おじさまはいよいよ地団駄を踏み出してしまった。(子供じみててほんと可愛い)


「何故、何故出汁巻き卵を!弁当の添え物は厚焼き卵と相場が決まっておりましょうぞ!」
「はあ?」


……どういう意味?卵は入れたけど何が気に入らなかったんだろう、出汁巻き卵と厚焼き卵って同じものじゃないの?


「全然、全然違うものですぞ!名前の通り出汁巻き卵は出汁でほんのり塩味の卵焼き、厚焼き卵は出汁が入っている場合もありますが、基本的に甘く仕上げたもののこと、私は甘くない卵焼きなど卵焼きとは認めませぬ、認めませぬぞ!」
「はあ……」


卵焼きは甘くしろってことね、そういえば陳宮おじさまは極度の甘党だった、甘くない卵焼きでこんなに怒るとは……恐るべし甘党のおじさま、可愛くてつらいとか言ったら余計に怒るんだろうなあ。

大の男に、この私に可愛いとは心外ですぞー!とか言っちゃってさ、うん可愛い。


「聞いておりますかななまえ!」
「ああ、はいはい陳宮おじさまは卵焼きを甘くするのね」


ちゃんと覚えておくから、そう言ってお弁当箱を洗うために受け取る、包みを開けば甘くない卵焼きを散々邪道だとか、それに近しいことを言ってたくせに結局全部綺麗に食べきってるじゃないか。


「甘くない卵焼きなどあり得ませぬが、ですがなまえの作ったものを残すなど外道、外道の極み」


いろんな注文を付けてきても、結果的には完食してくれるからそれでチャラ。今日も美味しく頂きましたぞ、っていう一言が付いてくると結構舞い上がるタイプです私。


卵焼き論争


20140107
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