曹魏フィルハーモニー管弦楽団 | ナノ

丁寧に整えられた髪はまるで濡れた黒曜石、広くて大きい背中はいつだって荘厳。思わずうっとりするような声は滅多に聞けない代物、弦を押さえているであろうしなやか指先が、低音を演奏する時にちらっと見えるのです。それこそ一瞬なんだけれども絶対に見逃しはしません。

聴こえるチェロの音はちょっと不器用で硬めな音質、それでも他を圧倒する豊富な種類のカラフルな音色は一度聴いたら忘れたくても絶対に忘れられない。


「はひ、今回も素敵でした……!」


定期演奏会を直前に控えたゲネプロを終え、ばらばらと帰宅していくメンバー達を横目に私は椅子に座ったまま、相棒のコントラバスを抱き締めるようにしながら、今や空っぽの首席チェロ奏者の椅子を眺めていた。

弓を操る右腕のしなやかさ、抱え込まれるチェロが心底羨ましい。ぽわんぽわんと于禁さんに抱き込まれる妄想にだらしなく頬が緩む。

毎度のことながら、楽器の立ち位置の関係で眺められるのは後ろ姿ばかり。もっと近くで、なんて無理な話だ。でも、いつかきっと!いつか!正面切って言葉を交わせる日が来るって信じてる!根拠とかそういうのはないです、けど、はい……。


molt animato e con fuoco
非常に興奮して情熱的に
20140723
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