ヴァンパイア・アネクトード | ナノ

暗転していた意識がふと浮上を許す。


「起きたかい?」
「な!?」


一番最初に視界に飛び込んできたのはあいつだ、吸血鬼だとのたまう毛利元就とかいう男。私はそいつに膝枕をしてもらっている状態で目が覚めた、ゆるゆると頭を撫でている手が煩わしい、振り払って起き上がろうとしたところで違和感。

起き上がれない。

ぽわりと笑った毛利元就の手が額に乗っていて、力任せに押さえつけられているわけでもないのに、不思議と目に見えない何かの力が働いているみたいだ。


「大丈夫、まだ君は人間のままだから」


余裕の現れなのか腹が立つほど緩い笑み、ここがどこであるかなんて聞くのは野暮というものだ、見たことのない室内、薄暗くても自宅でないことくらいはわかる。

だからもしかして……まさか、そう危惧した。

会って早々死んで欲しいと言われたんだ、有無を言わせない雰囲気に、少なからず恐怖を覚えたことは正直悔しいけど認めざるを得ない。

しかしまさかの事態は杞憂に終わる、とりあえず今のところは。


「この状態なら一瞬で君を殺せる」
「……」
「何故まだ殺していないのかって聞きたいんだろう?」
「良心が、なんてことはないと思ってる」
「そうだね、良心なんて持ち合わせていないかな、ただ、少しだけもったいないと思ったんだ」


緩い笑みは変わらない、でも僅かにその笑みの奥底に違う表情が見えた気がした、ほんの一瞬だったから確証はないけど。


「しばらく私の暇潰しに付き合ってもらおうと思っているよ」
「暇潰し?」
「君の、なまえの方から一緒にいさせて、と、そう言わせてみせるよ」
「……うわ、冗談は存在だけにして欲しい」
「これは手厳しい、前途多難そうだ」


余裕の表れなのか、本心を読ませないための仮面なのか、どちらにせよ、その緩く柔らかい微笑みに、腹の底はすっかり隠されている。窺い知る余地は微塵もなかった。

触れられた手は驚いたことにじんわりと温かい。

20140414
20160218修正
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