ヴァンパイア・アネクトード | ナノ

【3つの恋のお題ったー】
抱きしめて、キスをして/愛してるって、言って。/君に恋して、君への愛を知る


始終ご機嫌な朱然、ふいに伸ばされた手を何となく払いのけたら、頂上まできて後は落ちるだけというジェットコースター並に機嫌が急降下。


「なにするんだ!」
「え?」
「え?じゃない!なんで払いのけるんだ!」
「何を?」
「いや何をって、手だ!他に何を払ったっていうんだよ!」


これでもかというほどにキリリとした眉を釣り上げて怒る、ぐるぐると唸る朱然はきっと放っておけば放っておいただけ機嫌が悪くなる。ちょっとからかい過ぎたみたい。


「ごめんね、照れ隠し」
「今更照れる必要なんかないだろ」
「だって時々ものすごく色っぽい目つきするんだもん、朱然」
「俺が?」
「うん」


これは本当、狼男の一族の末裔である朱然は荒々しい気性の持ち主ではあるけれど、普段はとっても優しくて情熱的。狼の獰猛さと人としての柔らかさが同居する瞳の輝きは、一度目を合わせるとなかなかそらせなくなる。


「俺はなまえの方が色っぽいと思う、いつもそうだ、何気ない仕草に俺はいつも火傷しそうなほど焦がれるんだ」
「なんか詩人みたい」
「惚れ惚れするだろ?」
「いや全然」
「冷め過ぎてる!」


むくれてそっぽを向いた朱然、今度こそ本当に機嫌を損ねてしまったようだ。朱然?ねえ、朱然ってば。何度呼んでも無反応、これは完全に拗ねてる、あらまあ困った。どうしたら機嫌直るのかなあ、わざとらしく声に出して言ってみる。ぴくりと動いた肩にさりげなく顎を乗せて上目遣いに朱然の横顔を覗く。

唇を尖らせてこちらを一瞥した朱然は、むすりとしたまま小さな声で何かを零した。


「……る、って」
「え?」
「誠心誠意、心を込めて愛してるって言ったら、許してやってもいい」
「……ぷ」
「笑ったな!ああもう絶対許さないぞ!」
「うそ、ごめん!朱然大好き!すっごくすっごく世界で一番愛してる!この際だからハグもしちゃう」


噛み付かんばかりの勢いで唸ってる朱然にしがみ付く形で抱き付いた、あまりにも可愛らしい条件を突きつけてくるものだから堪えきれなくて、ついつい噴き出してしまったのだ。これだけで機嫌が直るとは思っていなから、啄むような小さいキスをひとつこめかみに落として、もうひとつ頬に。


「今更過ぎる」
「もう許してくれないの?」
「言ったろ、絶対許さないって、俺の気が済むまでは」
「じゃあ、どうしたら気が済む?」


むくれてそっぽを向いていた朱然が、まっすぐこちらに向き直り、腰に腕を回すと力任せに引き寄せられる。


「こうする」


近付いてきた端正な顔、強い輝きを持った瞳に私が映る、下唇を柔く食まれ、ぺろりと軽く舌が這う。


「もうやめてって言っても絶対やめないからな」


返事は聞かないつもりのようだし、有無も言わせないみたい。


于禁さん用に頂いたお題ですが可愛いお題だなあと思っていたら何故か朱然になってしまいました。
20140327
20160218修正
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