ヴァンパイア・アネクトード | ナノ

「ええとなまえ、ちょっとだけ……いいかな」
「えええ、また?この前も献血並みにいきましたよね?」
「すごく仕事で疲れたんだ、ほんの数十ミリでいい、頼むよ」
「とか言って何食わぬ顔でがぶ飲みしやがった前科があるので了承しかねます」
「大丈夫、今回は大丈夫……たぶん」
「もう目がいっちゃってる感じがハンパないんで絶対嫌です、それに動けなくなると何もできなくなるじゃないですか!」
「……」
「せっかくの休日潰す気ですか?」
「でも、ほら……ええと、いいじゃないか」
「ちょ……っきゃあああ!」


覆い被さってきた徐庶さんは、一瞬視線を泳がせたものの、吹っ切れたように首筋に歯を立てる、そして容赦なく皮膚を破って血を啜った。

何もかも全部根刮ぎ持っていかれるような錯覚を起こして途端にぐったりと動けなくなる。何を隠そう彼は現代を生きる吸血鬼、厳密に言えば吸血鬼の末裔である。


「やっぱり、美味しい……生き返る」
「こ、のやろ」


仕事で一週間ほど出張に行っていた彼は、憔悴しきった顔で帰ってくるなり血を寄越せとのたまった。自分は吸血鬼ではあるが、末裔だからそれほど多くの血は必要ないと言っていたのに!

月イチあたり百ミリ程度で平気だと言っていたのに!明らかにそれ以上を要求してくるのって、とってもおかしいと思います。


「疲れるとどうしても欲しいんだ、それになまえの血、中毒性があるみたいで……飲めば飲むほどもっと欲しくなる」
「断酒ならぬ、断血したら、どうですか」
「そんな!俺に死ねって言うの!?」


今度は私が憔悴する番だった、血を飲んで途端にご機嫌になった徐庶さんを弱々しく睨んでみる。前に、動物の血液で代用出来ないこともないって言ってたじゃないですか、まだ血の滴る切り落とし直後の生肉を食べたとか……腹は下したけれど、動物の血液は飲めなくもないって。


「でも……まずいんだ、においもひどいし」


しょげかえる彼にどうしたものかとため息、捨てられた子犬みたいな姿を見てしまうと何も言えなくなってしまう、うっかり血液取られすぎて失血死、なんてことになりませんように、切実に。


20140117
20160218修正
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