ヴァンパイア・アネクトード | ナノ

しんしんと降りつもる雪を見て今年ももうすぐ終わるんだなあと感慨深く……なるものだと思っていましたが、今年は暖冬のようで雪は1ミリも降っていません。昔ほど雪を見る機会が減った気がするのは気のせいではないと思います。ただ、テレビで見る全国の天気予報で、北側は相変わらずの一面銀世界になっていたけれど。

「どうした、何か心配なことでもあるのか」
「え?」
「え、ではない、さっきからため息の数が尋常ではない」
「いえ、あの」
「なんだ」
「心配事というよりも今年が終わってしまうのが寂しいというか、なんというか」
「やり残したことでも?」

仕事か?と聞かれて慌てて首を振る、終わらせるべきことはきちんと終わらせてからここにきました。なれば何故、今日の于禁さんはどういうわけかとても食い下がってくる、会話が切れるものだとばかり思っていた矢先、于禁さんは私の返事をじっと待っているようです。

困りました、これは言ってもいいものでしょうか。

「言いにくいことか」
「えっと、そういうわけでは……」
「ならいいだろう、言ってみよ」

言うまで帰さぬ、そんな威圧に気圧されながらしばらく言葉を選んでぽつぽつと口を開いた(帰さぬという言葉に胸が高鳴ったなんて言ったら引かれてしまうでしょうか)

「実は……雪化粧を施されたチャペルを于禁さんと見たかったなあ、と思いまして」
「……」

は?とでも言いたげな、こう言っては失礼ですがなんとも間の抜けた表情の于禁さん、珍しいものが見られました。
せっかく素敵なチャペルがあるのだから、年の瀬に雪が見たかったのです。きっと幻想的でしょうね、と付け加えれば今度は于禁さんが深々とため息をついてしまい、何かいけないことでも口走ってしまっただろうかと不安になってきました。

「あ、あの、すみません、変なことを言ってしまって」
「……いや」
「于禁さん?」
「もっと重々しいことだとばかり思っていた、例えばなまえがここからいなくなるのでは、と」
「まさか!転勤はしばらくないと思いますよ」

そうではない……と妙に疲れた声色で呟いた于禁さんは、立ち上がるとティーポットを手に取った。私が、と言う前に制されてしまい、おとなしくそのまま待っているとスパイシーで心が落ち着くフルーツ系の香りがふわりと踊る。
クリスマスティーのようです、いい香りに自然と笑みがこぼれティーカップを手渡されました。琥珀色がほんのりと湯気を立てて幸せが溢れてくる。

「熱いぞ、気をつけよ」
「はい、ありがとうございます」

ふうふうと冷ましながら紅茶を口に含む、美味しいと口に出せば于禁さんは満足げに口元を緩めていた。

10th anniversary
リクエスト:チャプレン于禁/Tea Agentさん
20180101
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